研究課題
本研究では難治性気道アレルギー疾患であるABPMの新規標的分子の同定・その発現メカニズムの解明を行う。ABPMは大半がアスペルギルスにより惹起される。申請者らはこれまでに気道上皮細胞を各種の真菌抽出物で刺激し、他に真菌抗原では誘導されず、アスペルギルス抗原の刺激のみで誘導される185の遺伝子をマイクロアレイで網羅的に検討することにより見出した。また、それらの遺伝子群の一部ではアスペルギルス自体が有するセリンプロテアーゼが重要であった。昨年度、気道上皮細胞をセリンプロテアーゼインヒビターで処理することにより、アスペルギルス由来のセリンプロテアーゼ依存性に発現誘導される分子を検討できるin vitroの系を確立した。本年度は、そのin vitroの発現系を用いてアスペルギルス由来セリンプロテアーゼ依存性に発現が変動する分子をマイクロアレイで網羅的に検討した。昨年の検討では早期(刺激3時間)に誘導される遺伝子群と後期(刺激24時間)で誘導される遺伝子群の存在が示唆された。そのため、本年度も早期および後期の発現の変動を観察した。刺激3時間ではcytokine-cytokine受容体関連遺伝子群、MAPK-signaling関連遺伝子群、Toll-like受容体関連遺伝子群などが見出された。刺激24時間では刺激3時間で認められたcytokine-cytokine受容体関連遺伝子群の他、B cell受容体-signaling関連遺伝子群、NOD-like受容体遺伝子群などが発現誘導されていた。個々の遺伝子ではVEGF、TSLP、IL-1α、MIP-3α、IL-24などが候補遺伝子として見出された。
3: やや遅れている
本研究は難治性気道アレルギー疾患であるABPMの新規標的分子の同定・その発現メカニズムの解明を目指しているが、現段階で初年度の実験系の確立の遅延の影響もあり、本年度は候補遺伝子の検出までの成果に留まった。しかし、その候補遺伝子にはVEGF、TSLP、IL-1α、MIP-3α、IL-24など有力な標的分子含まれており、今後、mRNA,蛋白レベルの発現の検証へと検討を進めることが可能である。さらにその後、in vivoでの検証実験を行う。
今後、現在見出された候補分子のin vitroでのmRNA,蛋白レベルでの検証実験を行う。検証実験で確認した後、in vivoでの検証に進む。現段階では気道への好酸球の集積が確認されているマウス気道への真菌抗原注入モデルでの候補分子の発現の検討を予定している。また、有力な分子に関してはABPMの臨床気道検体での発現を検討する。さらに、バイオインフォマティクスでの検討から候補分子発現の共通経路の検索を継続するが、現在、共通経路の候補としてProtease-TACE-EGFR経路が見出されており、今後、Protease-TACE-EGFR経路のメカニズム・関連分子をさらに検討する。
本年度は初年度の実験系の確立の遅延の影響もあり、候補遺伝子の検出までの成果に留まり、その発現の検証実験が翌年に持ち越しとなったため、次年度使用額が発生した。
現在見出された候補分子のin vitroでの発現の検証実験を行う。mRNAの発現はreal time PCRを用い, 蛋白レベルの発現はELISAまたはWestern blotによる検証実験を予定している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Allergol Int.
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