研究課題/領域番号 |
26461173
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中田 登 国立感染症研究所, その他部局等, 主任研究官 (70237296)
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研究分担者 |
星野 仁彦 国立感染症研究所, その他部局等, 室長 (20569694)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | M. avium complex / drug resistance / MIC / rifampicin |
研究実績の概要 |
研究協力者が所属する臨床施設の肺MAC 症患者から分離された菌株を使用し、臨床経過も連結可能匿名化された情報としてデーターベース化した。これらの臨床分離株について、各種抗菌薬に対する最小発育阻害濃度(MIC)を測定し、対照とする薬剤感受性標準株(MAC104 株、ATCC700898)との比較から薬剤耐性・感受性を決定した。現在の肺MAC 症の標準的治療はCAM,EB,RFP の3 剤でありそれに加えてフルオロキノロンを併用することもある。CAMの感受性については、調べた株の約14%が、対照と比較して4倍以上のMICをしめした。また、EBに関しては、約7%、リファンピシンでは、約70%の株が対照と比較して4倍以上のMICを示した。フルオロキノロン系薬剤のオフロキサシンでは、ごくわずかの菌株のみが耐性を示した。CAM、EB、RFP 、フルオロキノロンの標的分子をコードする遺伝子はそれぞれ、rrl、 embB、rpoB、gyrA(B)であるので、臨床分離株からDNA を抽出し、まず、高率で耐性が見られたrpoB遺伝子の耐性決定領域(rifampicin resistance determining region, RRDR)といわれる領域約500bpを増幅するようにprimer pair を設定してPCR 増幅を行った。得られた増幅断片の塩基配列を決定し、リファンピシン感受性菌であるM. avium 104株のrpoB塩基配列と比較した。その結果、多くの株で5か所の変異を検出したが、これらは全て同義変異と言われるアミノ酸の置換を伴わないものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、世界的に患者数の増加を認め日本では肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の増加を引き起こしているMACについて、今後薬剤耐性頻度が急激に増加することが予想されるため、その薬剤耐性状況と、薬剤耐性を引き起こす原因となる遺伝子の変異を同定することを目的としている。本年度は、臨床分離株における薬剤感受性の状況を把握することを計画し、これを調べた。臨床分離株については、本研究の研究期間内にさらに調査を進めることが可能であるので順次データの更新を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度からは、主にリファンピシン、クラリスロマイシン、フルオロキノロンについて、それぞれの薬剤の標的遺伝子と考えられるrpoB、rrl、gyrBA遺伝子の変異と薬剤感受性の変化の関係を調べるため、Mycobacterium smegmatisを利用した遺伝子交換株の作成を行う。作成した組み換え株を利用して 薬剤感受性試験を行って、変異と薬剤耐性の因果関係を直接的に証明する。rpoB遺伝子については、既にMycobacterium lepraeと、Mycobacterium tuberculosisのrpoB遺伝子を利用した実験系があるが、rrl遺伝子とgyrBA遺伝子については新規の実験系となり、さらにrrl遺伝子については宿主菌となるM. smegmatisがゲノム中にrrl遺伝子を2コピー有するため、2段階に遺伝子組み換えを行う実験の構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、予想以上に消耗品の消費が少なく、今後に予想される分析にかかる費用のため倹約をおこなったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に関しては、変異の解析など、特に塩基配列の決定に多くの費用がかかるため、主にこれに助成金をあてる予定である。
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