研究課題
疫学研究において、血清鉄濃度低値は喫煙者において、呼吸機能低下の危険因子であることが報告されている。しかし、その機序は不明である。本研究の目的は生体内における鉄の濃度の変化が、マウス喫煙暴露時の肺気腫形成にどのような影響を与えるかを検討することである。4~5週齡雄のC57BL/6Jマウスを2群に分け、鉄欠乏食およびコントロール食を3週間投与した後、タバコ10本/日、10日間(週5日)で喫煙暴露を行った。最終暴露から24時間後に気管支肺胞洗浄を行ったところ、鉄欠乏食投与群でのみ喫煙暴露後で有意なマクロファージ主体の細胞増加が認められた。このことから鉄欠乏状況下では喫煙暴露の炎症が増強される可能性が示唆された。それに応じて、気管支肺胞洗浄液中のinterleukin-6濃度は、鉄欠乏食下では有意に増加するが、コントロール食下では有意に増加しないことが示された。さらに、鉄欠乏食およびコントロール食を与えながら、喫煙曝露を8週間施行した。鉄欠乏食喫煙曝露マウスとコントロール食喫煙曝露マウスで、肺組織におけるmean linear interceptを比較したところ鉄欠乏食喫煙曝露群で有意に増大していた。さらに、マウス呼吸機能検査装置を用いて総肺気量、機能的残気量を測定したところ、鉄欠乏食喫煙曝露群にてこれらの有意な増大が観察された。鉄欠乏食喫煙曝露マウスにおいては、気道上皮におけるhypoxia inducible factor-alpha (HIF1alpha)の発現が亢進していることが、免疫染色にて確認された。すなわち、鉄欠乏状態がマウスの気腫化肺形成を促進していることが証明され、その機序として低酸素ストレス応答が鉄欠乏状態では亢進していることが、何らかの役割を果たしていることが示唆された。
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別冊BIO Clinica 呼吸器疾患と慢性炎症
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