研究課題
肺胞上皮での飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のバランスに着目し、肺胞上皮細胞の脂肪酸組成を制御するElongation of long chain fatty acid member 6 (Elovl6)の発現と呼吸器疾患進展との関係をElovl6遺伝子欠損マウスを用いて明らかにすることを目的に研究を開始した。Elovl6欠損マウスでは間質の線維化だけでなく、肺胞の破壊による気腫性変化も伴っていた。また、弾性線維の断裂を認めたが、膠原線維には変化は認めなかった。一方、Elovl6欠損マウスの肺ではアポトーシスが認められ、アポトーシスに関連してBaxおよびBcl-2遺伝子発遍の上昇も認められた。さらに、この肺から脂質を抽出し、脂肪酸分画を測定したところ、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の増加、不飽和脂肪酸であるオレイン酸の減少を認めた。次に、野生型マウス2ヶ月の長期喫煙曝露を負荷して肺気腫モデルを作製したところ、非喫煙マウスに比較して、喫煙マウスの肺胞上皮でElovl6蛋白の発現増加を認めた。さらに、この肺気腫モデル肺の脂肪酸分画を測定すると、パルミチン酸の減少とオレイン酸の増加を認め、肺線維症モデルと逆の結果となった。一方、6ヶ月の喫煙曝露ではElovl6の発現は0.9倍と、対照群と比して発現レベルに明らかな差は認められず、いずれの脂肪酸分画においても両群間に有意な差は認められなかった。以上の結果から、肺気腫の初期段階では、肺組織のⅡ型肺胞上皮細胞でのElovl6の発現が増加することで脂肪酸の鎖長伸長が進み、炭素数16の脂肪酸が減少、炭素数18の脂肪酸が増加することで、肺気腫の病態に影響することが推察された。一方、肺気腫の慢性期では、肺組織のⅡ型肺胞上皮細胞におけるElovl6は肺気腫発症前の発現レベルに戻り、肺組織における脂肪酸組成にも変化が認められないことが示唆された。
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European Heart Journal: Acute Cardiovascular Care
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1177/2048872616683635
Journal of the American Heart Association
巻: 5 ページ: e004014
10.1161/JAHA.116.004014