研究課題
MEK阻害薬によるKRAS変異肺腺癌細胞の増殖抑制は、p38阻害薬との併用だけでなく、siRNAによるp38αノックダウンによっても増強されるか検証した。p38αを標的としたsiRNAsは、H1792細胞株においてp38α発現を著明に抑制し、同細胞株のコロニー形成能を有意に抑制した。また、siRNAsによるp38αノックダウンとU0126(1μM)の併用は、U0126単独処理と比べて、H1792のコロニー形成能を有意に抑制した。以上より、MEK阻害薬によるKRAS変異肺腺癌細胞の増殖抑制効果は、p38阻害薬だけでなく、siRNAによるp38α阻害でも増強されることが明らかとなった。これまでに、PD-L1を高発現するKRAS肺腺癌細胞株H358、H441において、siRNAによる変異型KRASノックダウン、MEK阻害薬、ERK阻害薬により、PD-L1発現が抑制されることを見いだしたが、H358と同程度のPD-L1高発現を有するKRAS肺腺癌細胞株H1373でも、変異型KRAS siRNA、MEK阻害薬、ERK阻害薬により、PD-L1発現が抑制されることを確認した。また、PD-L1低発現のKRAS肺腺癌細胞株H23、H1792でも、変異型KRAS siRNAによりPD-L1発現が抑制された。KRAS変異陽性非小細胞肺癌細胞株13株を用いた解析では、PD-L1発現レベルは、KRAS発現レベルやKRASコピー数と有意に正相関することがわかった。一方で、H358、H441、H1373において、AKT阻害薬やSTAT3阻害薬処理によりPD-L1発現は抑制されなかった。以上より、非小細胞肺癌において、KRAS変異はMEK-ERKシグナル伝達経路を介してPD-L1発現を正に制御しており、KRASコピー数やKRAS発現量の増加に応じて、PD-L1発現レベルも増加する可能性が示唆された。
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