研究課題/領域番号 |
26461182
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
瀧口 裕一 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30272321)
|
研究分担者 |
岩澤 俊一郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00527913)
関根 郁夫 千葉県がんセンター(研究所), 呼吸器内科, 部長 (10508310)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 上皮間葉移行 / 薬剤耐性 / mTOR経路 |
研究実績の概要 |
EMT形質と薬剤感受性との関係について、① EMT形質獲得が直ちに薬剤耐性につながる可能性、② EMT形質は薬剤耐性の結果でしかない可能性、③ EMT形質獲得は直ちに薬剤耐性獲得につながらないが、薬剤耐性を獲得しやすくする可能性、などの仮説が考えられるが、いずれが正しいかを探索する目的で研究を行った。2つの肺癌細胞株(PC9、およびHCC827)において、TGFβとFGF2を培養上清に添加することにより、EMT形質(E-cadherin、fibronectin、slug、vimentinの発現をPT-PCRおよび蛍光顕微鏡にて評価した)を獲得すると同時に、シスプラチンおよびゲフィチニブに対する薬剤耐性を獲得することを確認した。この殺細胞性効果の差についてはAnnexin Vを用いたapoptosis解析においても確認された。mTOR阻害薬(PP242)、メトホルミン、セラストロール、DMSOはいずれもEMT形質を「リセット」すると同時に薬剤感受性を部分的に回復させるが、その程度は2つの細胞株で異なることを見いだした。2つの細胞株では、EMT形質獲得の過程で70S6K、 ERK1/2、Akt経路の応答性に差が認められた。この結果は上記①~③の仮説よりも、むしろ④EMT形質獲得には細胞株により複数のメカニズムが存在するが、いずれも薬剤耐性獲得と関連する、という事実を示唆するように思われる。 EMT形質と薬物感受性にはmTORを介した共通経路が関与するが、その下流シグナルについては細胞株に差が認められたことより、がん薬物療法の治療抵抗性克服にはEMTを阻害する治療法が期待できること、腫瘍の特性に合わせた個別化戦略が必要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
EMTと薬剤抵抗性との関係を調べる当初計画に対して、人工的に誘導されたEMTであっても薬剤耐性が生じること、EMTを人工的に「リセット」すると薬剤感受性を部分的に回復することを示したことは計画通りであるが、さらにその機序についてもある程度の知見を得ることができたため、計画以上の進展と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
EMT形質を誘導する経路における重要な分子をRNA干渉などを用いて阻害することにより、EMTを阻害し、薬剤感受性を回復させることができるかどうか、実験的治療の方法を検討し、in vivoモデルへの応用を試みる。
|