研究課題
気管支喘息は成人の4~6%が罹患する最も頻度の高いアレルギー性肺疾患である。また、近年の疫学調査でもその罹患率は増加傾向を示していることから、その対策が喫緊の課題とされている。気管支喘息の発症、重症化と正の相関を示す疫学因子として真菌感作が知られており、また気管支喘息の発症と負の相関を示す疫学因子としてBCG接種、ピロリ菌感染が知られている。興味深いことにこれらの因子はすべてC型レクチンにより認識されることが知られているが、C型レクチンのアレルギー性気道炎症発症における働きに関しては不明な点が多い。本研究ではアレルギー性気道炎症における各種C型レクチンの働きを明らかにすることを目的とした。チリダニ(HDM)を経気道投与することにより誘発されるマウスアレルギー性気道炎症モデルを用いて真菌認識機構であるC型レクチン Dectin-1、Dectin-2の働きを検討した。Dectin-1欠損マウス、Dectin-2欠損マウスともにDHM誘発性アレルギー性気道炎症モデルにおいて好酸球性炎症が減弱していることが明らかとなった。さらに肺浸潤CD4陽性T細胞のサイトカインプロファイルを検討したところ、Th2サイトカインのみならずTh17サイトカインが減弱していることが明らかとなった。この分子機構を解明するため肺におけるDectin-1、Dectin-2発現細胞を検討した。興味深いことにDectin-1、Dectin-2ともにアレルギー性気道炎症発症に必須であるCD11b陽性樹状細胞に高発現することが明らかとなった。今後は、Dectin-1、Dectin-2のCD11b陽性樹状細胞における働きを詳細に検討するため、それぞれのC型レクチンにより誘導される遺伝子群をRNAシークエンスにより解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
Dectin-1欠損マウス、Dectin-2欠損マウスの解析によりDectin-1、Dectin-2のアレルギー性気道炎症における働きが解明され、これらの分子に関しては当初の予想を上回る進展を見せていると考える。同様の解析手法は他のC型レクチンの役割の解明にも応用可能であり、今後も順調に進展することが予想される。一方、申請時には他のC型レクチンの解析も並行させることを予定していたが、Dectin-1、Dectin-2の解析を進める過程で、これらの分子が新規治療標的となり得ることが示されたため解析を先行させている。他のC型レクチンに関しても欠損マウスの入手を申請済みであり、コロニーが拡大された時点で早急に解析に着手する予定である。
上記のようにDectin-1、Dectin-2がHDM誘発性アレルギー性気道炎症の発症に寄与していること、さらにDectin-1、Dectin-2が肺CD11b陽性樹状細胞に発現していることが示された。今後はHDMによりDectin-1、Dectin-2依存的に発現誘導される遺伝子群をRNAシークエンスを用いて網羅的に同定するとともに、それぞれの遺伝子のアレルギー性気道炎症における役割を解明することを予定している。既に肺よりCD11b陽性樹状細胞を単離する方法、および解析に必要なDectin-1欠損マウス、Dectin-2欠損マウスは入手済みであり、コロニーを拡大しているため早期に実験に着手できる状態にある。
DC-SIGN欠損マウスを入手しコロニーを拡大する予定だったが、依頼先の状況によりまだマウスが入手できていない。このため次年度使用額が生じた。
遺伝子欠損マウスの繁殖、および抗体購入へ使用予定
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Mod Rheumatol
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http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/allergy/research/index.html