研究課題/領域番号 |
26461186
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
藤澤 朋幸 浜松医科大学, 医学部, 助教 (20402357)
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研究分担者 |
須田 隆文 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30291397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気道炎症 / 気管支喘息 / Toll-like receptor / IL-17 / polyI:C |
研究実績の概要 |
正常ヒト気管上皮初代培養細胞(Normal human bronchial epithelial cell: NHBE)ならびに正常ヒト気管上皮cell line(BEAS2B)を用いて、PAMPs(TLR リガンド)と気管支喘息病態関連サイトカイン(Th2 サイトカイン; IL-4, 13、Th17 サイトカイン; IL-17A)の共添加を行い、気道炎症関連遺伝子群(L-8, G-CSF, CXCL-1, IL-1F9)の発現誘導に関してreal-time PCR 法を用いて検討した。IL-17A / polyI:Cの共刺激は、polyI:C単独刺激と比較して、IL-8, G-CSF, CXCL-1, IL-1F9 mRNA発現ならびにIL-8, G-CSF蛋白発現を相乗的に誘導した。 ついで、相乗的発現誘導に関わる細胞内メカニズムを検討した。特異的阻害剤やsiRNAを用いてNF-κB経路およびIRF3経路の阻害を行うと、polyI:CによるG-CSF, IL-8の誘導とIL-17A / polyI:C共刺激による相乗的発現誘導は減弱した。転写後の調節機構に関する解析では、二次的なタンパク合成を介する経路の関与やmRNAの安定性に変化はみられず、相乗的発現誘導においてそれらの関与は否定的であった。Western blottingでは、polyI:C刺激およびIL-17A / polyI:C共刺激によりIκB-αとIRF3がリン酸化されることが確認され、IκB-αのリン酸化はpolyI:C単独刺激と比較してIL-17A / polyI:C共刺激で有意に増強した。 以上の結果より、PolyI:CによるTLR3の活性化とIL-17Aは、気道上皮細胞においてNF-κB経路およびIRF3経路の活性化を通じて、相乗的に気道炎症関連遺伝子を誘導すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,「気管支喘息発作時の気道炎症増悪をもたらす気道上皮における獲得免疫と自然免疫の相互作用を解明し効果的な気道炎症抑制法を開発すること」を目的としている。平成26年度の研究成果により、喘息の難治化に関わるIL-17Aとウイルス感染(polyI:C刺激)は、気道上皮における炎症性サイトカイン・ケモカイン発現を相乗的に増加させることが確認された。そこで平成27年度は、相乗的発現誘導に関わる細胞内経路の解析を主体に研究を行った。特異的阻害剤やsiRNAを用いてTLR3, TLR/TIR-domain-containing adaptor-inducing interferon β (TRIF), NF-κB経路, IRF3経路を阻害することにより、IL-17A / polyI:C共刺激による相乗的発現誘導の減弱が確認され、TLR3/TRIF、NF-κB経路、IFR3経路のいずれもがIL-17A / polyI:C共刺激による相乗的発現誘導に関与することが示唆された。 さらに、Western blottingにてIκB-αとIRF3がリン酸化を検討したところ、IFR3リン酸化はpolyI:C単独刺激とIL-17A / polyI:C共刺激で差はみられなかったが、IκB-αリン酸化はIL-17A / polyI:C共刺激でpolyI:C単独刺激と比較して増強がみられた。以上より、IL-17A/polyI:C共刺激による相乗的炎症関連遺伝子発現誘導には、NF-κB経路、IFR3経路がが関与し、特にNF-κB経路が重要である可能性が示唆された。今後は、詳細な転写メカニズムに関して解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、IL-17A / polyI:C共刺激による相乗的な炎症関連遺伝子(IL-8, G-CSF)発現誘導には、NF-κB経路、IFR3経路が重要であることが示された。今後はIL-17A / polyI:C共刺激による相乗的な遺伝子発現誘導に関わる転写メカニズムに関して、特にNF-κBとIRF3に着目し解析を進める予定である。 Western blotting を用いた解析により、IκB-αのリン酸化はIL-17A / polyI:C共刺激によりpolyI:C単独刺激と比較して増強することが確認され、相乗的発現誘導においてはNF-κB経路がより重要である可能性示唆されている。そこで、相乗的発現における転写メカニズムに関して、クロマチン免疫沈降法を用いて、IL-8, G-CSF遺伝子のプロモーター領域におけるNF-κB (p65, p50) の結合について、単独刺激時(IL-17A 又は polyI:C)と共刺激時(IL-17A + polyI:C)の相違を解析する。同様に、IL-8, G-CSF遺伝子のプロモーター領域におけるIFR3の結合に関して、クロマチン免疫沈降法を用いて検討する。さらに、L-8, G-CSF遺伝子のプロモーター領域におけるRNA polymerase IIの結合に関して、単独刺激時(IL-17A 又は polyI:C)と共刺激時(IL-17A + polyI:C)で比較検討する予定である。これらの解析により、喘息の難治化時関わるIL-17A(獲得免疫)とウイルス感染(自然免疫)の相互作用による相乗的な気道炎症増強作用に関わる細胞内機序関ならびに転写メカニズムを明らかにできるものと考えている。
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