研究課題/領域番号 |
26461189
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
金廣 有彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20243503)
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研究分担者 |
宮原 信明 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (70335610)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / アレルギー性気道炎症 / レチノイドX受容体 / 核内受容体 / パーシャルアゴニスト |
研究実績の概要 |
気管支喘息の本態は気道の慢性炎症と気道過敏性亢進であるが、このアレルギー性気道炎症はTh2細胞を中心とした好酸球性気道炎症のみでなく、近年ステロイド薬の効果が認められない非好酸球性気道炎症が重要な問題となっている。とくにその中心となる好中球性気道炎症に関与しているTh17細胞や過剰なアレルギー反応を抑制する制御性T(Treg)細胞が重要な役割を果たしている可能性が考えられるが、そのメカニズムは非常に複雑で未だ明らかではない。今回、我々の研究グループが開発したレチノイドX受容体(RXR)選択的パーシャルアゴニストに関する研究により、Th2細胞のみでなく、Th17細胞及びTreg細胞と核内受容体であるRXR、そのヘテロダイマーとの相互作用、さらにRXR選択的パーシャルアゴニストの作用機序及び治療効果が明らかとなれば、気管支喘息の重症・難治化の制御のみでなく発症を予防できる可能性があり、本研究は喘息ゼロの達成を視野にいれた極めて重要な研究であるとともに、今後さらに増加するアレルギー疾患の新たな治療戦略となり得る世界に類を見ない画期的な研究である。 申請者らは喘息マウスモデルを作製し、RXR選択的パーシャルアゴニスト混合飼育飼料を経口投与し、アレルギー性気道炎症に対する効果を検討したところ、投与マウスでは抗原特異的気道過敏性の亢進及びBALF中のリンパ球、好酸球、好中球などの炎症細胞の有意な抑制効果を明らかにし、またRXRを完全に活性化するフルアゴニストに認められる受容体の活性過多に由来したホメオスタシスの破綻による種々の副作用の出現は認められなかった。核内受容体RXRとRXR/ヘテロダイマーのパーシャルな制御の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の喘息マウスモデルを作製し、RXR選択的パーシャルアゴニスト(Net-4IB)混合飼育飼料を経口投与し、アレルギー性気道炎症に対する効果を検討した。RXR選択的パーシャルアゴニスト投与マウスでは抗原特異的気道過敏性の亢進及びBALF中のリンパ球、好酸球、好中球などの炎症細胞の有意な抑制効果が認められた。さらに、病理組織学的検討では、好酸球の有意な気道局所への集積及び気道リモデリングである杯細胞の過形成が抑制された。また、血清中抗原特異的IgEの産生抑制効果、BALF中のTh2サイトカインであるIL-5、IL-13及びNOの有意な産生抑制効果、さらに肺組織中のCD4+ T cell、CD8+ T cell、CD11b+ cellの抑制効果、また肺組織中TNF-alphaの抑制効果を認めた。また、肺組織中NF-kBの有意な抑制効果が認められた。 一方、抗原感作曝露後に肺組織中の単核球を分離し、抗原再刺激の培養上清中のTh2サイトカインの検討ではRXR選択的パーシャルアゴニスト投与マウスではIL-5及びIL-13産生が有意に抑制された。また、抗原感作後脾臓から分離した単核球を抗原刺激し、RXR選択的パーシャルアゴニストの抑制効果を検討したところ、培養上清中のIL-5及びIL-13産生は有意に抑制された。 今回検討したRXR選択的パーシャルアゴニストでは明らかな副作用は認められず、核内受容体RXRとRXR/ヘテロダイマーのパーシャルな制御の重要性及び臨床応用の可能性も示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らにより確立された喘息及び気道リモデリングプロトコールにおいて、野生型マウス、IL-17欠損マウス、IL-17R欠損マウス、IL-23欠損マウス等に、RXR選択的パーシャルアゴニスト及びRXRとヘテロダイマーを形成する核内受容体アゴニストを投与し、経時的に肺組織細胞、BAL細胞、末梢血及び脾臓細胞を採取し、iTreg細胞、nTreg細胞をモニタリングする。Treg細胞のSTAT5リン酸化、Ki-67陽性率、bcl-2 MFI等を測定することにより、Treg細胞の末梢分裂及び抗アポトーシス活性の上昇について明らかにする。また、Treg細胞をCD4/25/Annexin-Vにて多重染色し、分裂をCFSE dilution法で、PersistenceをAnnexin-V陽性率で測定し、Treg細胞の安定性について検討する。さらに、喘息及び気道リモデリングマウスにRXRアンタゴニストとヘテロダイマーを形成する核内受容体アンタゴニストを投与し、iTreg細胞、nTreg細胞の気道局所への集積、活性化等について詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、使用予定物品がこれまでの研究での充足分を順次使用したため新たに購入する必要がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はIL-17欠損マウス、IL-23欠損マウス及びanti-IL-17 mAb、anti-IL-23 mAb、anti-IL-22 mAb等を使用しRXR選択的パーシャルアゴニストの分子機構を解明する計画であり、さらにリモデリング形成に関与する気道上皮由来サイトカインTSLP (thymic stromal lymphopoietin)及びIL-33の産生制御、また自然免疫で中心的役割を果たしていると考えられているILC(innate lymphoid cell)グループ2の動態にもRXR/ヘテロダイマーが重要な役割を果たしている可能性が想定され、次年度はTSLP欠損マウス、IL-33欠損マウスで喘息モデルを作成し、またanti-TSLP mAb、anti-IL-33 mAbを用いることによりこれらの相互作用も明らかにする計画であり、新たな抗体等の購入に、今年度の残額を次年度分として請求した助成金と合わせに使用する予定である。
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