研究課題
小細胞肺癌におけるネスチンの臨床的意義を明らかにし、臨床現場への応用を目指して本研究を進めた。まずは、小細胞肺癌の増殖におけるネスチンの関与について検討した。小細胞肺癌細胞株を用いてそのネスチンノックダウン株を作成し、両者をマウスへ皮下移植したところ、腫瘍形成能は後者で有意に抑制された。故に、in vivoにおいても小細胞肺癌の増殖にネスチンが重要な役割を担うことが示された。次に、癌悪性形質として抗癌剤耐性とネスチンの関連について検討した。小細胞肺癌細胞株から複数の抗癌剤耐性株を樹立しネスチン発現を検討したところ、親株と比較し耐性株ではネスチン発現が総じて亢進していた。そこで小細胞肺癌細胞株にネスチンを過剰発現させたところ、3種の抗癌剤(シスプラチン、エトポシド、イリノテカン)全てに対して有意に耐性化した。以上により、小細胞肺癌の抗癌剤耐性化へのネスチンの関与が示唆された。更に、臨床検体を用いてネスチンの臨床的意義について検討した。名古屋市立大学病院の小細胞肺癌66例において、腫瘍組織でのネスチン発現を免疫染色法により検討した。36.4%(24例)において発現陽性であったが、陽性群と陰性群との間で、年齢・性別・喫煙歴・病型・血清ProGRPなどの患者背景には差を認めなかった。抗癌剤治療反応性は、一次治療では両群間で同等だったが、二次治療では陽性群で病勢制御率が低下する傾向にあった(58.3% vs 76.5%. P=0.42)。無増悪生存期間は、陽性群は陰性群と比べ、二次治療において有意に短かった(81日 vs 117日. P=0.03)。これらの臨床的知見は、上述の細胞株を用いた研究結果に矛盾しないものと考えられた。ネスチンは小細胞肺癌における増殖能や抗癌剤耐性に関与することにより患者の治療反応性に影響を与える可能性があることが、本研究により示唆された。
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