研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症過程において酸化ストレス障害の1つとしてアスパラギン(Asn)及びアスパラギン酸(Asp)残基の異性体化という翻訳後修飾が起こり、この過程は部分的に修復酵素PCMT1で異性体化は緩和されるが、D-体Asp残基やD-isoAsp残基は蛋白質の構造変化として残り、機能障害を起こすと考えられる。我々はCOPD患者の肺組織におけるPCMT1の蛋白質発現を検討し、有意な低下を見出した。この結果を基にPCMT1を標的としたshRNAを用いてA549細胞でのPCMT1を低下させた安定細胞株を作成した。この細胞株を用いD-Asp特異的エンドペプチダーゼ(Paenidase I)でD-Asp残基を有する蛋白質をスクリーニングし4種類の蛋白質を見出した。その中で活性酸素産生、酸化ストレスに強い因果関係を示すミトコンドリア蛋白であるProhibitin1(PHB1)に注目した。この蛋白質はPCMT1低下、または煙草抽出液を用いた時有意にD-Asp残基の増加を示した。PCMT1低下細胞株では、オートファジ―の亢進が認められた。PCMT1には細胞質型と小胞体型のアイソフォームが存在し、細胞質型の遺伝子発現を回復させるとミトコンドリア形態も回復した。PHB1には7か所のアスパラギン残基を有し、Asn(N)残基⇒Asp(D)残基変化させた蛋白質を発現させたA549細胞を樹立した。この中でN24DとN226Dはアスパラギン残基脱アミド化が特に起こりやすく、この2種類の細胞の細胞内脂肪滴の大きさ、個数について検討すると、ともに脂肪滴の大きさが拡大し、細胞あたりの脂肪滴の数が減少し脂肪滴の癒合促進が示唆された。したがってミトコンドリア蛋白質PHB1のアスパラギン残基脱アミド化の過程が脂肪滴の形成に関係し、細胞内小器官の変化を通じての加齢変化に関連することを見出した。
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