日本人の肺は遺伝的に脆弱であると考えられる。(1)薬剤性肺障害が他国(西洋や他のアジア人)より高頻度で見られ、致死的な経過をとる、(2)特発性肺線維症で他国より高頻度で急性増悪が起こり、高い致死率を示すこと、(3)皮膚筋炎のびまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage :DAD)型の急性間質性肺炎は海外では非常に少ないこと、(4) 特発性肺線維症合併肺手術後の特発性肺線維症急性増悪が海外ではみられないなどの事実が知られている。これらの疾患の病理像は、すべてびまん性肺胞障害で共通し、致死的な臨床経過も共通する。本研究グループでは日本人の肺にびまん性肺障害を起こしやすくする特有の遺伝的要因の存在が予想した。薬剤性障害及び特発性肺線維症急性増悪の患者検体を収集し、診断確実例の劇症例、死亡例 98例でヒト全遺伝子コード領域シークエンス解析(エキソーム解析)を行い、コーカシアン、中国人、日本人のエクソームfastqデータをデータベースより取得し比較した。統計的に有意に肺障害患者で多く認めた変異のみ選択した。これらの遺伝子変異のうち、疫学データに合致し、肺で発現しており、間質性肺疾患と関連のある機能を有する遺伝子はMUC4のみであった。MUC4の遺伝子多型がびまん性肺胞上皮障害を起こす原因を明らかなにするため、以下の研究を行った。 ヒトの切除肺からの気道上皮初代培養細胞の作製した。また、MUC4の遺伝子多型ごとにMUC4遺伝子をクローニングしMUC4の発現ベクターの作製した。今後、これらの細胞と発現ベクターを使用し解析を進める方針である。
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