研究課題/領域番号 |
26461197
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
福永 興壱 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60327517)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ステロイド抵抗性 / 好酸球 / NH細胞 |
研究実績の概要 |
自然免疫を担うリンパ球として近年新たに自然免疫系リンパ球Natural Helper細胞(NH細胞)が発見されるなど、“自然型アレルギー”という新しい概念が提唱されつつある。ヒトNH細胞は成人肺や腸管、慢性副鼻腔炎・鼻ポリープにその存在が確認されているが、上下道アレルギーに対する知見は未だ少ない。今年度我々は鼻茸手術検体からこのNH細胞ならびに好酸球の単離技術の確立を試みた。手術により採取された鼻粘膜・ポリープのうち、臨床検査に使用されなかった残余分の鼻組織から調製した細胞懸濁液、あるいは更に分画した単核球画分中にNH細胞が含まれることをフローサイトメトリーにて確認した。CD45陽性細胞中に占めるNH細胞の割合は0~1.4%で,多くの検体では0.1%程度であった.慢性副鼻腔炎患者のうち,臨床像などから好酸球性副鼻腔炎と判別される患者では,そうでない患者に比べNH細胞の割合が高い傾向を認めた。また一方でNH細胞を単離するために,セルソーターを用いて,CD45(+)Lin(-)CRTH2(+)画分を回収した。その結果,複数の鼻組織からNH細胞を単離することに成功したが,その数は最大でも数千個の単位であった。またセルソーターを用いて好酸球を単離したところ95%以上の高純度で好酸球を単離することに成功した。今後,リピドミクスの手法を用いて表現型解析を行う予定であるため,脂質代謝活性を指標として単離した好酸球の機能を評価した.単離した好酸球をカルシウムイオノフォア存在下で刺激,細胞外に放出された脂肪酸代謝物を液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)法にて定量した。その結果,鼻組織からセルソーターにて単離した好酸球が,脂質代謝活性を保持していることが確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は好酸球性鼻茸および副鼻腔炎からNH細胞ならびに好酸球を単離方法の確立を目標とした。結果的にNH細胞ならびに好酸球細胞の単離方法はほぼ確立できたが、NH細胞に関しては採取できる細胞数が少ないため、本来の目的であるステロイド抵抗性などの評価に至るまでの解析を行えていない。好酸球に関してはLC-MS法で脂質代謝活性を確認できた。今後も症例を集積していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
採取できる細胞数の少ないNH細胞に関しては増殖系の確立を試みるとともに少数でも解析ができるトランスクリプトミクス解析などを検討し、表現型の探索を続ける。好酸球に関してはさらに症例数を集積し、臨床背景・データなどとの関連について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な物品調達を行ったため
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次年度使用額の使用計画 |
今回未使用額については27年度予算とともに消耗品(抗体など)の費用として使用する予定である。
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