今回申請者は上下気道においてステロイド抵抗性を示す病態、すなわち難治性喘息およびこれに高頻度に合併する慢性好酸球性副鼻腔炎に着目して研究を進めた。なかでもこれらに関わりの深い炎症性細胞である好酸球ならびにグループ2自然リンパ球(Group2 innate lymphoid cells:ILC2s)を中心に解析を進めた。まずは両細胞を安定して末梢血から採取する方法を確立した。特にILC2sに関してはFACSを利用しても20mLから数千個の細胞した採取することができず、その性質の解析を行うのに十分とは言えなかった。そこでsingle cell解析法(共同研究者:東京大学大学院理学系研究科 上村想太郎教授ら)を用いた解析を行った。これにより健常者と上記患者におけるILC2sの表現型(増殖能、サイトカイン産生能)の違いが明らかになってきた。現在これらの細胞を用いてRNAシークエンスを行いより表現型の違いを遺伝子レベルで明らかにするために更なる検討を進めていく予定である。また好酸球に関しては鼻茸、末梢血から単離し網羅的解析(Omics解析)を行った。結果、炎症局所における好酸球の性質は通常のそれと酵素発現やメディエーター産生において異常があることを明らかにした(論文投稿準備中)。現在これらの異常発現に対する因子について解析を行うとともに、発現抑制機能についても検討を重ねている。さらに今回の期間中には明らかにできなかったが、ステロイド抵抗性となる因子についても網羅的解析から得られた結果から解析を進めて行く予定である。
|