研究課題/領域番号 |
26461199
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 匡 順天堂大学, 医学部, 助教 (10596993)
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研究分担者 |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10226681)
高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / microRNA / タバコ煙抽出液 / miR-146a / 気道上皮細胞 / IL-8 / NF-kB |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪は患者のQOLや呼吸機能を低下させ、生命予後を悪化させるため、その予防および治療はCOPDの管理における重要な課題である。現在、増悪時の炎症反応に対する治療はステロイド薬が中心であるが、副作用の点から代替治療が望まれている。一方、miR-146aは、NF-kBにより発現が制御されているmicroRNAであり、IRAK1、TRAF6を主な標的遺伝子として、これらの発現を抑制することで炎症反応のネガティブフィードバックを担っていると考えられている。また、COPD患者肺の炎症がmiR-146aによって制御されうることを、肺線維芽細胞を用いた検討により報告している。さらに、タバコ煙誘導マウス肺気腫モデルでは、野生型と比較して、タバコ煙曝露によるmiR-146a発現が亢進することを見出している。そこで、COPD増悪時の炎症へのmiR-146aの関与を明らかにするため、以下の実験を行った。 ヒト気道上皮細胞 BEAS-2Bに対して2.5%タバコ煙抽出液 (CSE)を6日間曝露させた後、リポ多糖 (LPS)あるいは炎症性サイトカインIL-1b/TNFa刺激を1-3日間行った。その結果、LPSあるいはIL-1b/TNFa刺激後のmiR-146a発現量は、CSE前処置により有意な増幅が認められ、2日間刺激後がピークであった。また、上清中のIL-8もCSE前処置により有意に経時的な増幅を示した。さらに、NF-kBのリン酸化は、CSE前処置なしでは刺激1日後から3日後にかけて漸減するのに対して、CSEありでは3日後にかけて発現が遷延することが分かった。 以上の結果から、miR-146aが、タバコ煙による炎症の増幅において、その初期反応を抑制するために関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、in vivo実験と並行して行ってきたin vitro実験系につき報告した。これまでに報告してきたin vivo実験の成果を補完するデータが得られており、研究計画全体としておおむね順調に進展していると考えている。in vivo実験(タバコ煙曝露実験)において、曝露装置の老朽化が懸念されていたが、本年度、機器の更新が成されたため、今後安定して曝露実験が行える状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度報告したin vitro実験については、より詳細なメカニズムの検討および今後の創薬ターゲット探索を目指したアッセイを追加する予定である。また、in vivo実験では、従来用いているCOPDモデルであるSMP30ノックアウトマウスに対する慢性タバコ煙曝露を行い、血液中のエクソソーム中のmicroRNAプロファイル解析を中心に行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生しているが、少額であり、ほぼ予算通りの支出となっている。実験補助員である三井亜樹へ依頼する仕事量が想定よりもやや多くなったため、人件費支出の割合が高い結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き有能な実験補助員である三井亜樹への給与として必要額を支出する。また、既述したin vitroおよびin vivo実験に必要な試薬類、とくにmicroRNAを中心とした遺伝子解析用試薬を中心とした消耗物品への予算を計上する。また、次年度は研究成果を京都で開催される日本呼吸器学会学術講演会で報告する予定であるため、その旅費についても予算を計上する。
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