研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD) の中心的な発症メカニズムは、気道や肺の慢性炎症による傷害とされるが全貌は未だ明らかではない。COPDの病態において、microRNA (miR)による制御をはじめとしたエピジェネティックな機構の役割が示唆されている。エクソソームはmiRなどを内包し、細胞外分泌による細胞間情報伝達を行う機構が報告されている。そこで今年度は、COPDの病態に関わるmiRの同定を目的に、気道分泌型エクソソームの解析を行った。気道上皮細胞株BEAS-2Bを培養し、タバコ煙抽出液(CSE)刺激を6日間行った。その後継代を行い、その翌日からLPSまたはIL-1β/TNFα刺激を2日間行った。細胞上清を回収し、超遠心法によりエクソソームを採取した。採取したエクソソームの粒子数および粒子径を、NanoSightを用いて解析した。また、CD81およびCD9抗体を用いたタンパク質発現解析によりエクソソーム発現量を評価した。さらに、エクソソームからRNAを抽出し、miR-146a発現を解析した。また、4か月齢雄のCOPDモデルマウスSMP30-KOに,30分/日、5日間/週のタバコ煙曝露を8週間行い、最終曝露の翌日にLPSを単回気管内投与し、その3日後に気管支肺胞洗浄液(BALF)の回収を行った。BALFからエクソソームを抽出し、エクソソーム中のmiR-146a発現を解析した。気道上皮細胞培養上清およびマウスBALFから十分量のエクソソームを抽出した。タバコ煙およびLPSやIL-1β/TNFαといった炎症誘導物質の投与により、エクソソームの分泌量が増加し、さらにこれに含有されるmiR-146aも増加することを見出した。抗炎症作用を有すると考えられるmiR-146aの生体内での運び手として、エクソソームが重要な役割を担っている可能性が強く示唆された。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 492 ページ: 74-81
10.1016/j.bbrc.2017.08.035