研究課題/領域番号 |
26461203
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
寺崎 美佳 日本医科大学, 医学部, 助教 (50372785)
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研究分担者 |
寺崎 泰弘 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50332870)
三宅 弘一 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90267211)
漆山 博和 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20725303)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サバイビン / 非腫瘍性肺疾患 / 再生 / 炎症急性期 |
研究実績の概要 |
Ⅰ:ヒト健常者肺及び種々の肺疾患でのサバイビンの発現、局在の検索において、正常症例と比較しびまん性肺胞障害で、肺胞上皮に明瞭なサバイビン発現を確認した。また慢性の肺線維症疾患では軽度のサバイビン発現がみられたものの、急性のびまん性肺胞障害と比較し、その発現は弱かった。その他のアポトーシスマーカーも同様の結果であったが、サバイビンはその違いが明瞭であった。増殖活性が高い場所にサバイビン発現がみられる傾向を認め、TUNELと二重陽性像が一部に見られたが、caspase-3発現との関連性は見いだせなかった。 Ⅱ:種々のマウス肺疾患病態モデルでのサバイビンの発現動態の解析において、LPS肺障害モデル、高濃度酸素暴露肺傷害モデルにても肺胞上皮細胞にサバイビン発現が増加することを確認し、TUNNELとの二重染色にて二重陽性像を認めた。また免疫組織化学およびmRNA発現増加を確認した。ウェスタンブロッティングに関しては現在進行中である。また放射線障害もでるについては、現在検討中である。 Ⅲ:種々の培養肺(上皮)細胞での傷害モデルを作製し、遺伝子操作してサバイビンの発現を抑制や亢進の調節をした際の傷害効果のin vitro検討において、LPSでの、in vitroで傷害を来した状況でのサバイビンの発現は増加することを確認した。現在、培養気道上皮細胞に遺伝子操作にてサバイビン発現を抑制、亢進の調節を行っている。 I, II, IIIを通して、肺炎症性疾患におけるサバイビン発現は、より急性期にみられること考えられ、急性期での上皮傷害再生に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性期、慢性期における再生過程にサバイビンが関与しているとの仮定の下、研究をおこなっているが、特に炎症急性期における再生過程にサバイビンが関与している可能性が示唆された。また、サバイビン発現部位が、特に上皮細胞にみられることからも、上皮傷害に関与していると考えられた。炎症初期に上皮傷害が強く起こるモデルほど、サバイビン発現が明瞭で、比較的緩徐な過程を示す炎症モデルでは、発現増加がみられるものの、急性期より低い傾向がみられていることは、当初の過程とはやや異なったものであった。このことより、今後の研究では、傷害の種類を限定してのさらなる検討が必要であると考える。また培養細胞では、サバイビン抑制により細胞分裂が阻害され、培養細胞が生存できなくなることから、抑制系のモデル検討は困難であった。現在サバイビン亢進系モデルでの検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は詳細なサバイビン発現のメカニズムを明らかにするため、培養した肺上皮細胞に細胞死誘導する系での、サバイビン亢進を調節して同様に傷害効果を比較検討する。サバイビンアミノ酸残基を変異させたサバイビン発現ベクターとしてpcDNA3HA-survivinT34、pcDNA3HA-survivinT34E、pcDNA3-survivinC84Aを用いドミナントネガティブサバイビンとしての機能を検索する。更にサバイビンアイソフォームのsurvivin2BやΔEx3の発現ベクターとその抗体Anti-Survivin 2B、Anti-Survivin ΔEx3 、Anti-Survivin 3Bを用い、未解明のサバイビンアイソフォームに働きについての検討を加える。サバイビンcDNAをAAVベクターに組み込みサバイビンを強発現するAAVベクターを構築する。 マウスで肺に集積が強い4型組換えAAVベクターを用いサバイビンの発現抑制や亢進を調節し種々のマウス肺疾患病態モデルでの傷害の差異の比較解析を行い、作製した4型組換えAAVベクターを肺疾患病態モデルマウスの尾静脈より静注し、肺に於けるGFPの発現、サバイビンの発現を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ベクター作成、導入に時間がかかり、やや解析が遅れている。予定のマウスにAAVベクターを用いる前段階での確認実験のため、培養細胞でのサバイビン機能解析が必要であり、今後試薬、遺伝子解析等にコストがかかると思われる。また海外の学会への参加を見合わせたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
詳細なサバイビン発現のメカニズムを明らかにするため、培養した肺上皮細胞に細胞死誘導する系での、サバイビン亢進を調節した傷害効果の比較検討やサバイビンアミノ酸残基を変異させたサバイビン発現ベクターを用いドミナントネガティブサバイビンとしての機能検索のための物品に使用する計画である。また、今年度は国内外の学会への参加費用として使用する予定である。
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