研究課題
サバイビンは細胞増殖・アポトーシス阻害機能の2重の役割を持つタンパク質で、我々は、間質性肺炎(IP)等の病態に焦点を絞った本因子の作用メカニズムの解析研究を行った。ヒトDAD肺やモデル動物(ブレオマイシン、LPS、高濃度酸素暴露、粉塵傷害)を作成し、傷害時の肺におけるサバイビン発現および局在の検討を行った。ヒトおよびモデル動物肺では、正常肺と比較し、傷害された肺胞上皮細胞を主体にサバイビンの著明な発現増加がみられ、肺胞洗浄液蛋白濃度の上昇、MMP2,MMP9上昇、SP-D増加との相関を認めた。凍結肺組織においてもサバイビンおよびactive-caspase3上昇が蛋白およびmRNAレベルで確認され、アポトーシスとの関連も示唆された。形態的に再生性の変化を伴う上皮細胞にサバイビン発現がみられ、細胞の再生起点に関わっている可能性が考えられた。このことから、サバイビンの肺上皮細胞への再生作用機序を明らかとするため、培養肺上皮系細胞を用いin vitroでのサバイビンshRNAや過剰発現による検討を行った。培養実験においても、ブレオマイシンの他、粉塵、高濃度酸素等で上皮細胞に傷害を加えると、サバイビン発現が誘導された。マウス肺胞上皮培養細胞にリポフェクタミンおよびウィルスベクターによるshRNAを使った遺伝子操作でサバイビン発現を抑制すると、著しく細胞増殖が抑制された。このことから、サバイビンは細胞障害時の再生に必須であることが明らかとなった。サバイビン抑制による影響をin vivoで確認するため、サバイビンshRNAベクターをアデノ随伴ウィルス(AAV)を用いてモデル動物への導入を試みた。AAVの感染によりベクター導入は主に肝臓にみられたが、肺への導入効率が低く、現在は経気道的にウィルスベクタ-を用いたサバイビンshRNA導入を引き続き行っている。
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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