研究実績の概要 |
胸腺がんのホルマリン固定パラフィン包埋検体53 例のうち解析可能な質のゲノムDNAの得られた25例について、50個のがん関連遺伝子のTarget sequencing を行い、既知のがん関連遺伝子の異常の探索を行った。うち、18例については凍結組織のゲノムDNAも得られたことから、併せて解析を行った。主要な遺伝子変異としてTP53 (16%, 4/25), FBXW7 (8%, 2/25), KRAS (8%, 2/25)の変異が認められた。その他、ATM、EGFR、NRAS、STK11遺伝子の変異が1例(4%)で認められた。検出された遺伝子変異の中では、既存の分子標的薬の奏功性との関連が推察される変異は認められなかった。 凍結組織18例のうち十分量のゲノムDNAが得られた13例について次世代シークエンサーを用いた全エクソンシークエンス解析を行った。特に正常組織DNAが得られた7例について、集中的に解析を行った。その結果、これまでに胸腺がんでの変異が報告されているCYLD遺伝子に2例変異が認められた。その他にも、数十個の変異遺伝子を同定した。またRNAの得られた17例について全RNAシークエンス解析を行った。その結果、白血病や肺がん等で知られる既知の遺伝子融合や複数例にみられる遺伝子融合は存在しなかった。また、残余DNAの得られた10例について、DNAチップ解析による増幅遺伝子の探索に着手した。
|