研究課題
本研究の目的は常染色体優性遺伝性多発嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)のモデルマウスであるPkd1lox/lox:MX1-Creマウスに対してカルシウム拮抗剤、レニン・アンギオテンシン系阻害剤などの降圧剤投与を行い、高血圧や降圧剤が嚢胞悪化に与える影響を明らかにし、そこから嚢胞増悪の機序を解明、今後の治療法の解明を目指す。また、15O-water PETを用いて高血圧発症前のごく早期のADPKD患者における血管内皮機能を測定し、血圧上昇の機序を明らかにし、今後の治療に結びつけることである。Pkd1lox/lox:MX1-Creマウスの腎に対する降圧剤投与実験では、Vehicle群、Amlodipine群、Olmesartan群には有意差を認めなかったが、Aliskiren群で明らかに嚢胞形成が抑制されていたため、その機序の解析を行った。全身RAS系の解析のために血漿レニン活性,及び血漿アルドステロン濃度を測定したが、各群で有意差を認めなかった。腎内RAS系の解析として尿中アンジオテンシノーゲン(AGT)排泄を測定しところnon-cystic群に比較しcystic群で尿中AGTが増加していた。薬物投与群で確認したところ、Vehicle群、Amlodipine群、Olmesartan群には有意差を認めなかったが、Aliskiren群のみで明らかに尿中AGTが低下していた。これらの結果から嚢胞形成促進には腎内RAS系の活性化が関与しており、Aliskirenによって腎内RAS系を抑制する事が、嚢胞抑制に繋がったと考えられる。15O-water PETを用いた血管内皮機能の測定に関してはすでに目標の症例数の検査を終えており、現在データ解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、計画通りにマウスを用いた研究、患者さんに対する研究の両者ともすすんでいる。マウスの研究に関してはさらなる嚢胞抑制抑制のメカニズム解析に移っており、血管内皮機能の測定に関しては、様々なパラメーターのデータを得ることができたため、現在データ解析を行うところまで来ており、まとまり次第論文作成にとりかかりたい。
Pkd1lox/lox:MX1-Creマウスを用いた研究に関しては、引き続き免疫組織学的、あるいはウエスタンブロッティングなどを用いて嚢胞形成機序や嚢胞抑制の機序を解析する。また、V-ATPase阻害剤の投与実験も開始しており、V-ATPase阻害剤によって嚢胞形成が抑制されるか、またその機序についても解析を行う。15O-water PETを用いた血管内皮機能の解析については、データを解析し、平成28年度内に論文掲載を目指す予定である。
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