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2014 年度 実施状況報告書

急性腎障害に対する糖代謝の制御を介した尿細管部位特異的な治療を目指して

研究課題

研究課題/領域番号 26461208
研究機関旭川医科大学

研究代表者

藤野 貴行  旭川医科大学, 医学部, 助教 (70322914)

研究分担者 長谷部 直幸  旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード急性腎障害 / 核酸治療 / 虚血再灌流障害
研究実績の概要

多くの急性腎障害(AKI)モデルを用いた研究では、最も虚血障害に影響を受けやすい、髄質外層の近位尿細管障害が注目されているが、しかし、ヒトの移植腎などの検討においては、障害部位はネフロンにおける髄質の遠位部位(髄質のヘンレ上行脚の太い部分(TALs)や集合管 (CD))が、皮質や髄質外層の近位尿細管より主に障害されており、動物モデルとヒトの病態における相違も認めている。虚血に対する障害の程度の違いは、酸素レベルの変化に対する障害部位における代謝の違いが影響している可能性があり、近位尿細管は好気性酸素代謝に依存しているが、TALsは嫌気性解糖系のエネルギー代謝に依存している。まずHypoxia-inducible transcription factors (HIFs) shRNAを用いて検討を行った。HIFsは腎実質細胞において虚血やHIF prolyl hydroxylase inhibitorsにより発現が誘導された。HIFs活性化の程度は、集合管で強く、TALsでは弱く、近依尿細管では中程度であった。このようにHIFsの作用は尿細管部位により異なっていた。p53とHypoxia-inducible transcription factors (HIFs) shRNAを用いて、その作用比較・検討を行い、代謝の特徴を考慮した尿細管部位特異的な障害・防御機序の検討を行うことにより、特異性の高い有効な治療を行うことが可能になる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

経動脈的に p53 shRNAを投与した場合に IRによる腎障害に対する効果を検討した 。C57BL/6マウスを用い左側腎を30分間虚血にし、その後再灌流を行った。shRNA治療は、トランスフェクション試薬に直鎖型陽性ポリマーのポリエチレンイミンを用い、p53に対するshRNAが組み込まれたプラスミドの投与を行った。P53に対するshRNAプラスミドを経動脈的に左腎に虚血直後に投与した場合、12時間後の髄質外層のヘンレ上行脚尿細管(mTALH) 細胞での障害軽減を認めた。IRによりmTALH細胞では、アポトーシスの増加、ミトコンドリア腫大、p53とGSK3-βの発現亢進を認めたが、P53 shRNAの投与は同部位のアポトーシスの抑制、GSK3-β 発現亢進抑制、βカテニンの発現低下の回復、ミトコンドリア腫大の軽減を認めた。

今後の研究の推進方策

がん抑制遺伝子産物p53は、生体を癌から防ぐという機能以外にも,多種多様な生体ストレスに対する応答と細胞の恒常性維持に働くことが明らかになっている。p53は嫌気的のみならず好気的呼吸も制御しており細胞のエネルギー産生に深く関わっているかどうかを検討する。p53の細胞内糖代謝経路における役割については、p53が尿細管細胞において、GLUT1 およびGLUT4 の転写を抑制することやTIGARおよびSCO2などのミトコンドリア酵素の発現誘導調節を行うことを検討する。
急性および慢性腎障害に関わる自然免疫への役割の検討としてマクロファージおよび樹状細胞への関わりの検討を行う。P53の樹状細胞(Dendric cell:DC)に対する効果として、腎皮質の尿細管周囲間質に存在する骨髄性間質DCとリンパ性形質細胞様DCの存在比率変化を検討する。P53のマクロファージ(MC)に対する効果として、一酸化窒素、炎症性サイトカイン(TNF-α), matrix metalloproteinase (MMPs), TGF-βなどの産生や、腎障害・線維化を評価する。P53により調節されるDCにおけるβカテニンに対する作用を検討する。P53による各尿細管細胞におけるヒストンメチル化、microRNA発現に対する役割を検討するために、網羅的発現解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

H26年度には、過去にえられたデータを参考に基礎的な検討をまず行った。H27年度以降に網羅的なヒストンメチル化、microRNA発現研究を予定し、この計画に大きな支出が予想されたため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

p53の細胞内糖代謝経路における役割については、p53が尿細管細胞において、GLUT1 およびGLUT4 の転写を抑制することやTIGARおよびSCO2などのミトコンドリア酵素の発現誘導調節を行うことを検討する。急性および慢性腎障害に関わる自然免疫への役割の検討としてマクロファージおよび樹状細胞への関わりの検討を行う。P53の樹状細胞(Dendric cell:DC)に対する効果として、腎皮質の尿細管周囲間質に存在する骨髄性間質DCとリンパ性形質細胞様DCの存在比率変化を検討する。P53のマクロファージ(MC)に対する効果として、一酸化窒素、炎症性サイトカイン(TNF-α), matrix metalloproteinase (MMPs), TGF-βなどの産生や、腎障害・線維化を評価する。P53により調節されるDCにおけるβカテニンに対する作用を検討する。P53による各尿細管細胞におけるヒストンメチル化、microRNA発現に対する役割を検討するために、GeneChipを用いた網羅的発現解析を行う。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Successful percutaneous transluminal angioplasty for the treatment of renovascular hypertension with an atrophic kidney.2015

    • 著者名/発表者名
      Maruyama K, Chinda J, Kabara M, Nakagawa N, Fujino T, Takeuchi T, Hasebe N.
    • 雑誌名

      Heart Vessels.

      巻: 30 ページ: 274-279

    • DOI

      10.1007/s00380-013-0457-4.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Minimal change nephrotic syndrome associated with gefitinib and a successful switch to erlotinib.2015

    • 著者名/発表者名
      Maruyama K, Chinda J, Kuroshima T, Kabara M, Nakagawa N, Fujino T, Yamamoto Y, Ohsaki Y, Ogawa Y, Hasebe N.
    • 雑誌名

      Intern Med

      巻: 54 ページ: 823-826

    • DOI

      10.2169/internalmedicine.54.3661.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Hemocholecyst complicated in a hemodialysis patient with microscopic polyangiitis.2015

    • 著者名/発表者名
      Maruyama K, Nakagawa N, Kabara M, Chinda J, Fujino T, Hasebe N.
    • 雑誌名

      Mod Rheumatol.

      巻: 12 ページ: 1-4

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 原則としての「厳格な降圧」達成のための注意事項2015

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      Heart View

      巻: 19 ページ: 392-400

  • [雑誌論文] Repolarization characteristics in early repolarization and brugada syndromes: insight into an overlapping mechanism of lethal arrhythmias.2014

    • 著者名/発表者名
      Talib AK, Sato N, Kawabata N, Sugiyama E, Sakamoto N, Tanabe Y, Fujino T, Takeuchi T, Saijo Y, Akasaka K, Kawamura Y, Hasebe N.
    • 雑誌名

      J Cardiovasc Electrophysiol.

      巻: 25 ページ: 1376-1384

    • DOI

      10.1111/jce.12566.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] エビデンスに基ずくCKD診療ガイドライン 20132014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 77 ページ: 483-489

  • [雑誌論文] 心性浮腫の特徴と対策2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      Fluid Management Renaissance

      巻: 4 ページ: 286-295

  • [雑誌論文] CKDにおける電解質異常と心不全・心機能2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      Fluid Management Renaissance

      巻: 4 ページ: 38-44

  • [雑誌論文] 原疾患と合併症に合わせた透析導入と維持2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 30 ページ: 1115-1126

  • [雑誌論文] Ca拮抗薬2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 77 ページ: 588-594

  • [雑誌論文] 腎硬化症における降圧療法の特殊性2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      血圧

      巻: 21 ページ: 517-523

  • [雑誌論文] CKD診療ガイドライン20132014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      CURRENT THERAPY

      巻: 32 ページ: 1098-1104

  • [雑誌論文] 糖尿病合併例での併用療法の進め方2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 雑誌名

      Modern Physician

      巻: 34 ページ: 1472-1479

  • [学会発表] Altering a Histone H3K4 Methylation Pathway in Glomerular Podocytes Promotes Proteinuria in Patient with Membranous Nephropathy.2015

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行
    • 学会等名
      日本循環器学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2015-04-24 – 2015-04-26
  • [学会発表] 特発性膜性腎症におけるポドサイトでのヒストンH3-K4トリメチル化とシナプトポジンの発現と尿蛋白量との関連2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行
    • 学会等名
      日本腎臓学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-07-04 – 2014-07-06
  • [学会発表] 特発性膜性腎症におけるポドサイトでのヒストンH3-K4トリメチル化とシナプトポジンの発現と尿蛋白量との関連2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行
    • 学会等名
      日本高血圧学会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      2014-05-24 – 2014-05-25
  • [図書] 高血圧診療Q&A2014

    • 著者名/発表者名
      藤野貴行、長谷部直幸
    • 総ページ数
      442
    • 出版者
      中外医学社

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公開日: 2016-05-27  

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