研究課題
糸球体硬化進展過程におけるポドサイト障害の意義と、その障害の連鎖について明らかにするために、ポドサイト特異的障害を惹起するNEP25マウスを用いて、ポドサイトと内皮細胞間のクロストークについて検討した。まず、NEP25マウスにイムノトキシン投与し、内皮細胞から産生されるいくつかの因子についてRT-PCRを行った結果、ポドサイト障害惹起直後から内皮細胞にPAI-1が発現していることが分かった。これは、蛋白尿やポドサイト剥離が起きる以前の急激な反応と関あげられる。内皮の発現は、蛍光抗体法で蛋白レベルでも確認され、ポドサイト障害により毛細血管内皮細胞が直ちに応答したことを示唆している。もちろん、直接反応であるのか間接反応であるのかについては、さらに検討を要する。このde novo PAI-1がどのような意味があるのか調べるために、PAI-1抑制薬投与したところ、NEP25マウスのWT1陽性細胞の減少が抑えられたことから、ポドサイト障害に伴う内皮からのPAI-1が、ポドサイト剥離をさらに促している可能性が考えられた。ここまでの結果は、これまで知られていなかったポドサイトと内皮細胞間の分子クロストークシステムがあることを示唆し、さたに内皮からのPAI-1がポドサイトに対してdanger signalとなっていると考えられる。PAI-1によってさらにポドサイトが剥離する機序について調べるために、培養ポドサイトを用いた検討を行ったところ、ポドサイトと基底膜の接着に関与するインテグリンalfa3/beta1の細胞以内取り込みが示唆されている。今後は、このエンドサイトーシスの機序について検討する。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究結果は、本マウスによる過去に行った、いくつかの研究過程で想像されたことの確認作業を含んでおり、それを実質的に検証したため、比較的スムースであった。
今後は、分子のネットワークを勘案しながら進めていかなくてはならないが、まずはPAI-1によるンテグリンの動態を培養細胞を使って調べてみる。さらに、インテグリンの細胞内取り込みに重要とされるU-PAR、U-PAなどのco-moderatorについて、その機能を明らかにすることで、ポドサイト障害に対する生体反応と糸球体不可逆性変化の機構を明らかにしたい。
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