研究課題/領域番号 |
26461211
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上杉 憲子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70279264)
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研究分担者 |
長田 道夫 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10192238)
島津 徳人 麻布大学, その他部局等, 准教授 (10297947)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 微少循環 / ヒト腎癌非癌部 / 3次元構築 / 細小動脈硬化 |
研究実績の概要 |
2014年研究の成果:以下の事項について、日本病理学会総会、日本腎臓学会総会、アメリカ腎臓学会で研究成果を報告した。 【研究成果の具体的内容】 血管硬化の一つに、糸球体門部に多数の細小血管が出現する(polar vasculosis、PV)という特別な病態が存在する。PVは、糖尿病性腎症で高頻度にみられ、高度の血管障害を有する高血圧症例でも頻度が少ないが存在する。PVの起源や糖尿病腎症のいつから出現するか、非腎症糖尿病や腎疾患のない例での出現の有無は不明である。PVの病態を解明するために、糖尿病、高血圧、コントールの腎癌非癌部のパラフィン連続切片に、多重免疫染色を施した組織をバーチヤルスライドにとりこみ、画像解析をおこなった。2次元連続切片から、糸球体門部のPVを同定するともに、さらに、小葉間動脈-輸入動脈-糸球体-輸出動脈にいたる3次元構築を行った。PVは糖尿病性腎症例だけでなく、非腎症糖尿病や動脈硬化が強い高血圧例に出現し、いずれも細小動脈の硝子化が強く認められた。PVは細小動脈の硬化が少ない糖尿病や高血圧例やコントロールでは認めなかった。観察したPVは全て、余剰の輸出動脈にその起源があり、最終的に傍尿細管毛細血管に連続していた。 【意義や重要性】今回の検討では、polar vasculosisは輸出動脈にその起源があり、糸球体-輸出動脈のremodelingにより生じるていることが確認された。細小動脈の硝子化と密接な関与も示唆された。この知見は糖尿病性腎症あるいは高度な血管障害を有する症例の微少循環の障害の機序について検討する上で、重要であり、今後多数例を解析することにより、血管のremodelingと動脈硬化、糸球体硬化の関連をさらに検討ができると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回は、連続切片と3次元構築でなければ観察しえない糸球体-細小動脈の観察を行い、polar vasculosisの起源を明らかにできた。血管の変化は、糖尿病性腎症だけでなく細小動脈硬化が強い非腎症糖尿病や高血圧に認められ、この病態の解析は糖尿病だけでなく、腎硬化における血管障害の機序を考える意味で重要である。この病態の解析のためには、多数例の検討が必要だが、最近は腎腫瘍は腎臓摘出術より、部分切除が主流になっていること、検討したい症例は腎機能の低下があり、さらに部分切除術の適応となっている。検体の収集が全体に困難で、その後の解析が滞っている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病あるいは進行した腎硬化症における糸球体門部の血管病変の解析のためには、より多数の症例を検討する必要がある。腎癌の非癌部の収集では、その目的を達することはできない可能性がある。血管と糸球体の構築だけであれば、解剖例を使うことを可能かもしれないので、現在適切な解剖例を収集中である。画像解析に可能かどうかを検討し、可能であれば、polar vasculosisの画像解析をを3次元、2次元的に検討していく予定である。 またこの研究の際に、腎門部以外の余剰な輸出動脈が、高齢者、高血圧、非腎症糖尿病で出現していることも確認した。糸球体-血管のremodelingが、動脈硬化あるいは糸球体硬化、加齢に関係する可能性があるため、2次元画像や3次元画像を構築し、その発祥機序を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前回の研究の科研費は当初予定の高額機器の購入がなかったことなどから、今年度も使用可能であった。この科研費を使用し、旅費の支払いや消耗品を購入していたため、本科研費の使用額が少なくなったいる。また、論文は、昨年度中には間に合わなかったため、今年度に投稿費用を支払う必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
まずは論文掲載費に使用する予定である。次年度は新しい研究をスタートするので、新しい試薬が必要で、その購入費用に回す予定である。
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