研究課題
本年度はTcf21を全身においてテトラサイクリン誘導性にノックアウトするマウスを確立した。このマウスに高脂肪食を6週齢から8週間与えると、野生型と比較して糖負荷試験では差がないものの、インスリン負荷試験を行うと、インスリン負荷後の低血糖からの回復が遅延する事が分かった。一方でTcf21をテトラサイクリン誘導性に、腎ポドサイト特異的にノックアウトするマウスも確立した。このマウスを用い、出生後の様々な時期に遺伝子欠損を誘導して検討を行ったところ、生後3―6週にて誘導してもマウスはほぼ正常であるが、出生直後にポドサイトからTcf21を欠損させると5―6週零においてアルブミン尿を呈する事が分かり、Tcf21はポドサイトの発生に重要だが出生後はその必要性は低下する事が分かった。さらに、糖尿病との関連においては、培養ヒトポドサイトを高グルコースにより刺激するとTcf21の発現が12時間をピークとして2倍程度と弱いながらも増加する事が判明した。また、Tgf–bにより刺激すると、24時間後に3倍程度の発現増加を認めた。また、STZを用いた1型糖尿病モデルマウスの糸球体において、Tcf21の発現は糖尿病発症後5週まで増加するが、10週及び20週後には非糖尿病群の約30%に低下している事がわかった。
2: おおむね順調に進展している
2種類の4重変異を有するTcf21KOマウス(テトラサイクリン誘導性 全身性及びポドサイト特異的KOマウス)を確立でき、また既に予測されているTcf21のポドサイトにおける重要性の他、インスリン感受性への関与を見出す事ができたため。
ヒト不死化ポドサイトにてTcf21をretoro virusにより過剰発現させ、細胞の形態、actin fiberの分布、遊走、接着、増殖などの細胞機能が修飾されるか検討する。また、ポドサイト特異的TCf21KOマウスをimmortomouseと交配し、Tcf21 KOポドサイトを単離し培養系を確立し、in vitroの実験に供する。ヒト培養ポドサイトを用い、Tcf21のDNAへの結合をChIP-Seq法で網羅的に比較解析し、その標的遺伝子を同定する。今のところTcf21に対しては良い抗体が存在しないため、Flag tag を持つTcf21を安定的に過剰発現させたポドサイト細胞株を用い、anti-flag M2抗体を用いてChIP assayを行う。また、このTcf21-Flagを発現する細胞を用い、IP-mass specによりTcf21の結合因子を同定する。加えて、野生型およびテトラサイクリン誘導性ポドサイト特異的Tcf21KO (PiTcf21KO)マウス(6週齢)にStreptozotocin (50mg/kg x5日間)を腹腔内注射し糖尿病を誘導する。野生型、iTcf21KO、野生型糖尿病、iTcf21KO糖尿病の4群をモニターし尿蛋白、血糖、体重を測定する。糖尿病惹起後18週後にマウスをsacrificeし、腎障害の進行を組織学的に比較検討し、ポドサイト傷害ならびに糸球体の構造変化を評価する。このような研究により、糖尿病性腎症の研究に新たな発見を加える事ができると期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
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