研究課題/領域番号 |
26461216
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
斎藤 亮彦 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任教授 (80293207)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メガリン / 慢性腎臓病 / レニン-アンジオテンシン系 / リン代謝 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
メガリンは近位尿細管細胞(PTEC)管腔側に発現し、多種の糸球体濾過タンパク質の再吸収に関わるエンドサイトーシス受容体である。メガリン解析を切り口として、以下の4点について研究を行った。 1) メガリンと腎内レニン-アンジオテンシン系活性化の関係の解明:質量分析法を用いてアンジオテンシンIおよびIIを定量する系を開発した。メガリンノックアウトマウスを用いて、腎臓組織内のそれらの定量を行った。さらにリコンビナントアンジオテンシノゲンをマウスに投与するとメガリンによって近位尿細管上皮細胞に取り込まれることを確認するとともに、投与に伴って腎臓組織内のアンジオテンシンIおよびII濃度の変化を解析した。 2) PTECの病的形質変化におけるメガリンの役割:高脂肪食負荷マウスにおいてはメガリンを介して腎障害が進展することを確認し、その機序について、メガリンを介する近位尿細管細胞内の過酸化脂質や老化物質の蓄積、およびオートファジーの異常が引き金になることを明らかにした。その成果となる論文は、J Amer Soc Nephrolに受理された。 3) メガリンを介するリン調節機序の解明:リコンビナントklotho 産物がメガリンに直接結合することを、水晶発振子マイクロバランス法を用いて明らかにした。リコンビナントklothoタンパク質あるいはその断片をklothoノックアウトマウスに投与することで、リン利尿における機能的な評価を行う系を開発した。さらにラット腎から近位尿細管刷子縁膜タンパク質を精製し、メガリンとNaPi2aの相互作用について、免疫沈降反応を用いて解析した。 4) 慢性腎臓病患者における尿中メガリン測定意義の検討:細胞外ドメイン型メガリンの尿中排泄が、糖尿病性腎症の進展の予測に有用であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) メガリンと腎内レニン-アンジオテンシン系活性化の関係の解明:アンジオテンシンIおよびIIを定量する系の開発に進捗がみられた。 2) PTECの病的形質変化におけるメガリンの役割:高脂肪食負荷モデルを用いて解析した論文がJ Amer Soc Nephrolに受理された。 3) メガリンを介するリン調節機序の解明:リコンビナントklothoタンパク質およびその断片を用いてklothoノックアウトマウスでリン利尿を評価する系を開発し、期待通りの結果を得た。 4) 慢性腎臓病患者における尿中メガリン測定意義の検討: 糖尿病性腎症の進展を予測する意義を見出せた。
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今後の研究の推進方策 |
1) メガリンと腎内レニン-アンジオテンシン系活性化の関係の解明:上記のように確立した測定系を用いて、メガリンノックアウトマウスの血液、尿、腎組織でアンジオテンシンIおよびIIを定量し、腎内レニン-アンジオテンシン系活性化機序におけるメガリンの役割を解明する。 2) PTECの病的形質変化におけるメガリンの役割:酸化ストレスの原因としてキサンチンオキシダーゼの役割を検討する。バルドキソロンメチルなどのメガリン抑制作用をもつ薬剤による治療的意義を検討する。 3) メガリンを介するリン調節機序の解明: klothoノックアウトマウスを用いた検討を重ねる。klotho存在下でのメガリンとNaPi2aの相互作用について免疫沈降反応を用いて検討する。 4) 慢性腎臓病患者における尿中メガリン測定意義の検討:症例数を増やして糖尿病性腎症について縦断的検討を重ねる。
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