研究課題/領域番号 |
26461218
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
坂井 宣彦 金沢大学, 大学病院, 助教 (60377421)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 線維化 / LPA / LPA1 |
研究実績の概要 |
線維化は臓器障害に対する過度の創傷治癒反応,すなわち細胞外基質沈着と細胞外基質産生能を有する細胞の集積を特徴とする.しかし,これら過度の創傷治癒反応をもたらす分子生物学的基盤は完全には同定されていない.本研究では脂質メディエーター,リゾフォスファチジン酸(lysophosphatidic acid; LPA)およびその受容体LPA1シグナルに着目し,上皮間葉連関を介した臓器線維化にはたす意義の解明を試みている.平成26年度は,組織中の線維芽細胞を同定するため,LPA1受容体欠損マウス(LPA1-/-)および対照マウス(LPA1+/+)をI型プロコラーゲンプロモーター下でgreen fluorescent protein (GFP)を発現するColGFPマウスと交配させ,LPA1-/-ColGFPおよびLPA1+/+ColGFPを作成した.このマウスに一側尿管結紮(UUO)にて腎線維化モデルを作成し,UUO10日目に屠殺し,腎組織を採取した.また近位尿細管上皮細胞(PTEC)をLPA刺激し,線維化惹起分子であるconnective tissue growth factor (CTGF)発現を検討した.その結果,LPA1-/-ColGFP群においてUUOによる腎線維化は抑制され,さらにGFP陽性細胞数,a-smooth muscle actin陽性筋線維芽細胞数およびCTGF発現も抑制された.また,PTECにおけるLPA刺激によるCTGF発現は,LPA1依存性であり,かつ転写因子myocardin-related transcription factor (MRTF)-A/Bとserum response factor (SRF)依存性であった.以上より,腎線維化機序においてPTECでのMRTF-SRFを介するLPA-LPA1シグナルの寄与が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲン産生細胞GFP標識LPA1欠損マウス(LPA1-/-ColGFP)を作成することができた.さらに作成したLPA1-/-ColGFPおよびLPA1+/+ ColGFPを用いて,LPA-LPA1シグナルがコラーゲン産生細胞や筋線維芽細胞の線維化組織への集積を介して腎線維化に寄与することを明らかにした.さらに,尿細管上皮細胞を用いた解析により,LPA-LPA1シグナルはMRTF-SRFシグナルを介したCTGF発現に寄与することも明らかにした.その上で,上皮間葉連関におけるMRTF-SRFシグナルの意義をより明確にするため,すでに尿細管上皮細胞特異的Cre発現マウスを入手した.
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今後の研究の推進方策 |
上皮間葉連関におけるMRTF-SRFシグナルの意義をより明確にするため,すでに入手した尿細管上皮細胞特異的Cre発現マウスを,現在入手手続き中のMRTF-A/B遺伝子改変マウスとかけあわせる.これにより,尿細管上皮細胞特異的MRTF-A/B改変マウスを作成して腎線維化に与える影響を検討する.また,尿細管上皮細胞,線維芽細胞を採取して上皮間葉連関にかかわる線維化関連分子発現を解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
MRTF-A/B遺伝子改変マウスの入手予定が平成27年度となったため
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次年度使用額の使用計画 |
MRTF-A/B遺伝子改変マウスを入手し,細胞特異的MRTFの意義を検討する
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