研究課題
慢性腎臓病(CKD)とその危険因子である肥満症は各々、慢性炎症と代謝障害を通じて動脈硬化症や心臓・肝臓等に臓器障害を惹起する。CD147 はMonocarboxylate transporter(MCT)のシャペロンとして乳酸代謝に促進し、細胞内エネルギー代謝・ATP 産生に大きな影響を及ぼす。我々は、1)腎尿細管に豊富に発現するCD147 がATP 産生亢進により糖・脂質・尿酸代謝の再吸収・輸送を促進する、2)酸化ストレスにより尿細管細胞のCD147発現は増加し、慢性炎症機構を活性化する、という知見を得ている。以上から過剰な糖・脂質・尿酸の細胞内蓄積による酸化ストレスはCD147を誘導・負のサイクルを形成する事によって相乗的な臓器障害を惹起する事が推測される。本研究では、腎エネルギー・代謝機構の網羅的解明を通じ、CKD から生じる臓器相関に対する治療法の探究を目的とする。本年度にエネルギー代謝におけるCD147の意義を解明するため、高脂肪・糖質負荷したCD147KO と野生型マウスを作製し、各臓器の採取採取を行った。血液・尿・心臓・腎臓検体をメタボローム解析にて主要な生化学反応経路やそれに付随する代謝産物について網羅的・動的解析をおこない、更に、アディポサイトカインの発現様式を比較検証した。その結果として、CD147欠損マウスでは野生型マウスに比して、随時血糖と尿酸値の抑制と中性脂肪の増加を認めた。さらに、CD147欠損マウスでは体重や摂食量に有意な差を認めないにもかかわらず、脂肪肝形成の程度は低かった。腎機能についてもCD147欠損マウスの腎機能の低下は抑止されていた。ATP産生能を含めて、腎尿細管における糖質・尿酸輸送機構や肝での尿酸・脂肪代謝機構とCD147 の関係をIn vitro 研究にて検証をおこなうため腎近位尿細管・肝細胞初代培養を施行している。
2: おおむね順調に進展している
すでに、In vivo研究の検体採取を終了し、In vitro研究においても実験を開始している。今後、これらの検体を使用して、 高脂肪・糖質負荷による臓器障害(心・肝・腎)に対するCD147 の意義を上記の検体にて病理学・分子生物学的に検証する。また、 上記の検体を使用し、酸化ストレス・細胞障害に対するCD147 の役割を分子生物学的に検証する。慢性炎症機構にて、サイトカイン産生性T 細胞や免疫恒常性維持に関与する制御性T 細胞(Treg)におけるCD147 の意義をTreg suppression assay などの機能解析を通して免疫学的に解明する。
今後も当初の計画通り2年目の実験計画を遂行するが、次年度には分子メカニズムの解明をおこなうため、これまで以上に研究協力者の提言を受ける予定である。
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