研究課題
慢性腎臓病(CKD)の予後を規定する最重要因子は心臓病とされている(心腎連関)。しかし、早期の心病変である心線維化を早期発見・モニタリングする簡便で適切なバイオマーカーは存在しない。そこで本研究では、複数の慢性腎不全モデルを用いて、慢性腎障害に伴う心臓障害を反映する指標代謝物群(バイオマーカー候補物質)をメタボローム解析を用いて探索し、代謝産物の中で、血清と心筋組織で相関・連動して動く物質を同定することを目的とした。(1)腎不全動物モデルにおけるメタボローム解析を用いたバイオマーカーの探索①マウス5/6 腎摘モデル食塩水負荷の有無で、かつそれぞれ4 病期(0,2,4,8 週)において心臓線維化、心肥大が進行することを確認した。血清、心筋、腹壁でメタボローム解析を行った。②アデニンモデル別のCKD モデルとしてアデニンモデルを作成。食塩水負荷の有無で0,2,4,8週に検討。同様に解析している。本年度において、上記腎不全モデルにて心重量・線維化を反映するバイオマーカーの候補2物質(S311,Y318)を抽出することに成功した。(2)得られた候補物質と多臓器の障害との関連性から、早期の心病変(心線維化・肥大)を特異的に検出し、その進行をモニタリングできバイオマーカーとして適正か検討した。CKD モデルにおいて心臓、大動脈、腹膜、皮膚、肝臓など各種臓器から検体を採取し、各組織における炎症や線維化を評価し(免疫染色、リアルタイムPCR)、血清中の候補物質濃度との相関を検討した。候補物質Y318 は、マウス血清中と心臓組織内濃度が相関し、心筋線維化とも相関することを確認した。皮膚でも同様の検討をし確認した。
2: おおむね順調に進展している
研究は当初の予定通りに動物実験をすすめ、バイオマーカーの候補物質をいくつか同定しその解析がすすんでいる。
今後さらにアデニン食塩負荷モデルも用いて、他の候補物質と合わせて様々な程度の心臓線維化状態を反映し、早期診断、モニタリングという観点から適正なマーカーを同定する。(1)すでに同定した候補物質Y318、候補物質S311 で、候補物質の代謝経路(合成、分解)をメタボローム解析にて解析する。代謝マップを用いて、代謝酵素をその発現の動きを含めてreal-time PCR で検索する。必要に応じて酵素活性も測定し、炎症・線維化の病態、原因、代謝産物の動態を検討する。(2) 同定したバイオマーカー候補物質を臨床応用するメタボローム解析から同定した候補物質を、当院にて腹膜透析(PD)施行中の患者血清で測定(n=53)。心エコー検査のLVmass、心拡張障害指標(E/E')との相関を確認する。病態の早期発見およびモニタリングに最も適したマーカーを同定する。
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