研究課題
【1】慢性維持血液透析患者の横断的解析において血清NGAL値は末梢血好中球数、筋肉量(%クレアチニン産生速度)、蛋白摂取量(アニオンギャップ)の3者により独立に規定された。新しい栄養指標として1年間の血清アルブミン値の変化量(ΔAlb)に着目し、ΔAlbを予測する因子を縦断的に解析すると、ベースラインのNGAL値および好中球数と正相関、アルブミンとは負相関を示した。NGAL値はアルブミン値と共に血液透析患者の栄養指標として有用であるが、透析患者の低栄養の主要な原因である感染・炎症によってNGALは増加する一方でアルブミンは低下するため、ΔAlbを予測するベースラインの指標としてはNGALが最も強力であった。【2】尿中NGALは腎糸球体、近位尿細管、遠位ネフロンのいずれの異常によっても増加することをすでに報告した。今回、薬剤誘導性遺伝子改変マウスを用いて、adultの時期に近位尿細管のメガリン遺伝子を破壊し、蛋白再吸収をほぼ完全に遮断すると、尿中アルブミン排泄は16倍、NGAL排泄は800倍にまで増加した。細胞死を伴わない近位尿細管の機能不全は尿中NGAL値の著しい上昇をもたらした。【3】上述のように血清NGAL値は腎障害、感染のみならず肥満でも増加する。高脂肪食負荷時には、NGAL欠損マウスは野生型に比べ摂餌量が多いが、体重増加は有意に抑制され白色脂肪重量が軽い傾向が見られた。また野生型では高脂肪食負荷により耐糖能及びインスリン感受性の悪化が見られたが、NGAL欠損マウスではこれらは有意に抑制されていた。一方通常食負荷時には両群間で各代謝パラメーターに明らかな差を認めなかったが、酸素消費量はNGAL欠損マウスで有意に上昇していた。NGALは肥満に伴い肝臓や白色脂肪組織で発現誘導され、脂肪蓄積を増強させ、インスリン抵抗性を惹起させる分泌蛋白の一つであると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した研究の目的が概ね達成できているため。
今後も計画通りに研究を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Clin Exp Nephrol
巻: 19 ページ: 99-106
10.1371/journal.pone.0132539
PLoS One
巻: 10 ページ: e0132539
http://www.kidney.kuhp.kyoto-u.ac.jp/research/yokoi.html