研究課題
生活習慣病関連腎症における蛋白尿と腎障害進行のメカニズム、特にpodocyteを中心とした糸球体傷害の分子機序とネットワーク機構の解明を目指した検討を行い、以下の研究成果を得た。1.Na利尿ペプチド(NP)ファミリーの生活習慣病関連腎症における意義の検討:アルドステロン負荷腎障害モデルにおけるpodocyteでのANP・BNP受容体(GC-A)およびp38MAPKの意義の解明のために、podocyte特異的GC-A欠損マウス(pod-GCA-KO)を作製、その表現型を解析した。その結果、pod-GCA-KOでは著しい蛋白尿(~15倍)とpodocyte傷害、糸球体硬化を認めた。このモデルにp38阻害薬(FR167653)投与を行うと、ほぼ正常にまで改善を示し、その機序にp53抑制が関与する可能性を示した。2.肥満糖尿病での交感神経系とN型Caチャネル(NCaC)の意義の検討:NCaCのalpha1サブユニット欠損マウスと肥満糖尿病マウス(db/db)を交配し、db/db NCaCホモ欠損マウス(糖尿病KO)を作製、表現型を解析した。その結果、糖尿病KOマウスではアルブミン尿の減少(-70%)、尿中カテコールアミンの著減を認めた。また培養podocyteを用いて、この機序にpodocyteのNCaC阻害が直接関与する可能性を示した。3.腎障害進展における自然炎症とマクロファージ由来MRP8の意義の検討:Lysozyme M-CreマウスとMRP8 floxedマウスを交配し、骨髄細胞特異的MRP8欠損マウス(myelo-MRP8-KO)を作製、腎障害モデルでの解析を行った。抗GBM腎炎モデルにおいて腎障害および腎組織の明らかな改善を認めた。また、db/dbマウスにangiotensin II負荷を行うと、著しいMRP8活性化と腎障害の悪化を認め、自然炎症の関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に示した内容に関する成果が出てきており、学会発表(米国腎臓学会、国際腎臓学会、国際高血圧学会、国際血管生物学会、日本高血圧学会、他)、および一部論文発表を行うことができた。さらに、論文発表の準備を進めている。
今年度は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系とNa利尿ペプチド系のpodocyteにおけるクロストークの機序、またpodocyte傷害から糸球体硬化に至る分子メカニズムについてさらに詳細に検討するとともに、p38MAPK阻害による改善の作用点を明らかにする。また、糖尿病脂質異常症合併モデル、肥満高血圧モデルにおける自然炎症の意義については、骨髄細胞特異的MRP8欠損マウスを用いた解析を進めていく。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
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