研究課題/領域番号 |
26461227
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松井 功 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60456986)
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研究分担者 |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00379166)
濱野 高行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (50403077)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ビタミンD / 25ヒドロキシビタミンD / 腎尿細管間質線維化 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
片側尿管結紮による腎尿細管間質線維化モデルマウスを用いて、25-hydroxyvitamin D (25(OH)D)自体が1,25(OH)2Dに変換されることなく直接的な薬理作用を発揮することを証明し、そのメカニズムを解明しつつある。25(OH)Dの直接的作用を明らかにするためには、25(OH)Dの作用を活性化ビタミンDである1,25(OH)2Dの作用から分離して評価する必要がある。このため、本研究では25(OH)Dが1,25(OH)2Dに変換されない25(OH)D-1α-hydroxylase (CYP27B1)ノックアウトマウスを用いて、血清25(OH)D不足状態、充足状態、過剰状態が腎線維化に与える影響を評価した。その結果、血清25(OH)D不足状態、充足状態の2群間において、腎線維化の進行度に差を認めなかったが、血清25(OH)D不足状態に比べ血清25(OH)D過剰状態において片側尿管結紮による腎線維化病変が悪化することを見出した。25(OH)DのビタミンD受容体(VDR)へのアフィニティーは1,25(OH)2Dの数百分の一程度とされているが、25(OH)Dの血清濃度は通常1,25(OH)2Dの千倍程度と高値である。このため、25(OH)DがVDRを介して腎線維化増悪作用を発揮するか否かを明らかにする目的で、CYP27B1/VDRダブルノックアウトマウスを用いて上記と同様の検討を行った。その結果VDR/CYP27B1ダブルノックアウトマウスでは25(OH)D過剰による腎線維化増悪作用が認められなくなり、25(OH)DはVDRを介して作用することが明らかになった。また、25(OH)Dが尿細管細胞ではなく腎浸潤マクロファージのVDRを介して作用を発揮することも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
活性型ビタミンDの前駆体であり、それ自体には活性がないと一般的に考えられていた25(OH)Dに薬理作用があることを明らかにし、そのメカニズムを解明しつつあるため、おおむね順調に進展していると考えられる。VDR/CYP27B1ダブルノックアウトマウスでは25(OH)D過剰による腎線維化増悪作用が消失するため、25(OH)DはVDRを介して作用することを明らかになった。また、クロドロネートリポソームを用いてマクロファージを消失させると25(OH)Dによる腎尿細管間質線維化増悪作用が消失することや、尿細管細胞およびマクロファージ培養細胞系の実験結果などから、25(OH)Dは腎尿細管細胞ではなく腎浸潤マクロファージのVDRに作用して線維化増悪作用を発揮することも見出した。以上の点より、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
近位尿細管細胞およびマクロファージの培養細胞系を用いて、25(OH)Dが腎浸潤マクロファージの形質転換を引き起こし、尿細管間質線維化を悪化させることを昨年度までの研究で見出した。しかしながら、25(OH)Dで刺激されたマクロファージを集団で解析すると、M1マクロファージ、M2マクロファージ両者のマーカー発現が上昇していた。本年度はこれらのマーカーが別々のマクロファージに発現しているのか、あるいは同一のマクロファージがM1/M2両者のマーカーを発現するのかを明らかにし、25(OH)Dによるマクロファージの形質転換メカニズムをさらに明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
25(OH)Dによるマクロファージ形質転換の解析が最終段階まで進まなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度までの研究で、25(OH)Dの作用はマクロファージVDRを介していることが明らかになった。このため25(OH)Dがマクロファージに与える影響をさらに詳細に検討するため次年度使用額を用いる予定である。
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