研究実績の概要 |
Vitamin D の生理・薬理作用は、肝臓で25位、腎臓で1位が水酸化された1,25(OH)2Dがvitamin D受容体(VDR)に結合することで発揮され、25-hydroxyvitamin D [25(OH)D]は1,25(OH)2Dの前駆体に過ぎないと一般的に考えられている。しかしながら、多くの疫学研究において腎予後と関連するのは血清25(OH)D濃度であり血清1,25(OH)2D濃度ではない。我々は本研究において、片側尿管結紮による腎尿細管間質線維化モデルを用いて、25(OH)Dが1,25(OH)2Dに変換されることなくVDRを介して薬理的作用を発揮することを明らかにした。25(OH)Dの直接的作用を検討するには、25(OH)Dの作用を活性型vitamin Dである1,25(OH)2Dの作用から分離して評価する必要がある。このため、本研究では25(OH)Dが1,25(OH)2Dに変換されない25(OH)D-1α-hydroxylase (CYP27B1)ノックアウトマウスを用いて25(OH)不足、25(OH)D充足、25(OH)D過剰状態が腎尿細管間質線維化に与える影響について検討した。その結果、25(OH)D不足群と25(OH)D充足群では腎尿細管間質線維化の進行度に差を認めず、25(OH)D過剰群では25(OH)D不足群に比べ尿細管間質線維化が悪化することが明らかになった。25(OH)Dの作用はCYP27B1/VDRのダブルノックアウトマウスで消失したため、25(OH)Dの直接作用はVDRを介したものであると考えられた。また、25(OH)Dは腎尿細管細胞ではなく腎浸潤マクロファージに直接的に作用し、腎浸潤マクロファージ数を変化させないものの、M1/M2両者の表現型を持つマクロファージの割合を増やすことで腎尿細管間質線維化を悪化させることが明らかになった。
|