本研究は、腎疾患における腎病理変化を推測するための診断ツールとして近年注目をあつめているmicroRNAやエクソソームを利用可能とすること、さらには新規治療薬のターゲットの探求を目的としている。本研究にて対象疾患となるIgA腎症、全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)の患者検体の収集と検体からのmicroRNAやエクソソーム内microRNAの抽出、モデル動物での検討を加えて診断に利用が期待されるmicroRNAの特定を行い腎病理変化との比較を行い、多数の有望なターゲットmicroRNAを特定できた。すでに報告したmicroRNA 26aなどはIgA腎症およびループス腎炎患者やループス腎炎モデルマウスにおいて有意に異常値を示しており新規診断バイオマーカーとして可能性があり病理変化との相関を解析を行った。一方でこれまで報告のあるmicroRNA抽出方法は、本来存在すべきmicroRNAを量的に正確に検出できておらず十分に回収できていないことを我々は過去に報告している。不完全な方法で回収された不十分な総microRNAの中からの比較検討は必ずしも正確な比率を表しているとは限らず、これまでの過去の報告にあるデータの信憑性については報告者自らmicroRNA抽出方法の不正確さに伴う限界を指摘してきている。我々の方法は従来の方法と比較にならない高いmicroRNA回収率を得る抽出法であり、本研究で得られたmicroRNAのデータの腎疾患への関連性に対する信憑性は疑いのないものである。さらに複数のターゲットmicroRNAの成績を組み合わせていくことで侵襲性が少なく、かつ診断精度の高い診断ツールとなることが期待できる。
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