研究実績の概要 |
虚血再灌流障害は、ショック、梗塞、移植など様々な病態に関与している。虚血再灌流時、大量に産生される活性酸素の主な産生源として、キサンチン酸化還元酵素(XOR)の関与が報告されてきた。また、興味深いことに虚血状態においては、XORがeNOSに代わって亜硝酸より一酸化窒素(NO)を産生し、組織保護的に働く可能性が最近報告されている。そこで我々は、XOR遺伝子改変(XOR+/+、XOR+/-)マウスを用いて、XORの虚血再灌流障害における役割を検討した。 虚血再灌流モデルマウス(XOR+/+IR, XOR+/-IR)、再灌流直前にXOR産生阻害薬(Allopurinol)を腹腔内投与する(XOR+/+ IRA)群を作成し、Sham治療群(XOR+/+S, XOR+/-S)と比較検討を行った。XOR+/+IRマウスでは著明なBUN, Crの上昇、組織学的に腎臓の皮髄境界を中心とした障害を認めた。XOR+/-IRマウスは、 XOR+/+IRAマウスと同程度まで腎障害の程度が軽減した。虚血再灌流障害には活性酸素の増加、炎症の関与が示唆された。XOR以外の活性酸素産生源であるeNOS, NADPHオキシダーゼの遺伝子発現に変化は認めなかった。虚血時のXORの組織保護的役割に関しては、亜硝酸を虚血開始前に投与するXOR+/+IRNマウスを用いて検討を行った。亜硝酸投与は腎虚血再灌流による腎障害をXOR+/-IR, XOR+/+IRAマウスレベルまで有意に改善した。 XOR/ApoE, XOR/eNOSのdouble KOマウスに関しては、生存率の検討を行った。XOR+/-ApoE-/-マウス並びにXOR+/-eNOS-/-マウスは平均寿命が16カ月と短命であった。
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