研究実績の概要 |
嚢胞性腎疾患は尿細管の一部もしくは全体が拡張する病態である。遺伝的嚢胞性腎疾患として、常染色体優性および劣性多発性嚢胞腎(ADPKDおよびARPKD)、若年性ネフロン癆(NPHP)などがある。近年、これらの原因遺伝子が次々とクローニングされ、それらの遺伝子産物が繊毛に局在することが明らかとなった。また、ift88の欠失などで繊毛形成が障害される変異体においても嚢胞性腎疾患が発生することが明らかとなった。 嚢胞性腎疾患の共通に観察される病態の一つに、細胞増殖亢進がある。細胞増殖を押されえる薬剤投与により嚢胞進展を抑制することや、逆に、c-mycやAPCを腎臓で過剰発現させることで腎臓嚢胞が発生することが知られている。したがって、細胞増殖亢進が嚢胞進展を進めていることが考えられている。
実際に細胞増殖が亢進しているのであれば、腎臓の全 DNA量の亢進が確認できるはずであり、また、BrdUでのラベルを用いてその増殖を正常腎臓と比較できるはずである。また、尿細管の管腔形成細胞数、直径と増殖との関連に関しても検討した。 経時的にP4, P9, P15, P21, p30で、腎重量及び腎臓の全 DNA量を対象群と嚢胞腎群を測定した結果、P4からP15までは腎重量には大きな差を認めなかったが、P21, P30では有意に大きな差が生じた。面白いことに、腎臓の全 DNA量はP4からP21まで差が認められず、P30ではむしろ嚢胞腎群で対照群より減少してきた。BrdU取り込みでは、嚢胞腎群が対象群に比べて常に高い値を示した。このことは、2つの可能性を示唆した。嚢胞腎群では増殖とともに細胞死が増加している。もしくは、BrdU取り込みが亢進していても細胞周期期間の増加がない。これらをさらに調べるため、BrdUとEdUのdouble label 及びapotpsisを数えた。
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