研究課題
我々の予備検討でIgA 腎症モデルマウスの腎組織において糸球体IgA と一致してapoptosis inhibitor of macrophage (AIM) の過剰な沈着が認められており、AIMはIgA 腎症においてIgA 沈着後の起炎機序に深く関わっていることが示唆される。一方、組織マクロファージの一部は内皮細胞を這いながら血管のパトロールを行い、恒常的に炎症や感染制御をしている。このパトロール行動はケモカインレセプターCX3CR1 に依存していることが近年判明している。さらに、IgA 腎症の肉眼的血尿出現時にはCX3CR1 のリガンドであるfractalkine(FKN)の発現が糸球体内皮・上皮細胞に増強することが判明していることから、本研究では、IgA 腎症におけるIgA の糸球体沈着後の炎症・進展機序へのCX3CR1/FKN/AIM axisの関与を検討することを目的とした。本年は主に動物モデルによる検証を行った。1-1.AIM KOかつ6-19Tgマウスによる検証:IgAの沈着により腎症を来すことが知られている6-19TgマウスをAIM KOマウスと交配させ、F2でAIM KOかつ6-19Tgマウスを作成した。同時に、CRISP/Cas9による手法でgddYのAIM KOマウスを作成することに成功した。ともにその経過について観察を開始している。1-2.AIMKOおよびWTマウスへの打ち込み実験:gddYマウスの血清をAIM KOおよびWTに静脈内投与し、2h・12h・24h・Day3・Day6・Day14の時点で血清・尿・腎組織採取を行った。WT・KOともに2時間の時点で腎組織にIgA沈着を同程度認めた。WTではIgAの沈着と一致してAIMの沈着を認めていた。しかし、WTでは12h後から同IgA沈着が消失するのに対し、KOではその後経時的にIgA沈着が増強することが確認された。また、WTでは6hの時点で糸球体内へマクロファージの浸潤が確認されたのに対し、KOでは12h以降で同細胞浸潤があり、また浸潤細胞数は明らかに少ない傾向を示した。AIMはIgA沈着後のclearanceおよびmacrophage浸潤において重要なkeyであることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
AIM KOおよびWTへの打ち込み実験は順調に進んでいる。各種検討必要事項が生じたため、まずは動物モデルにおけるメカニズムをさらに明らかにした上で観察項目を絞った上で臨床研究へ進む予定である。
今後は、既に作成してあるnephritogenic IgA hybridomaよりpurifyしたIgAの打ち込み、AIM KOで沈着するIgの由来を解明、マクロファージをdepletionした上での打ち込み実験などを行う予定である。また、AIM KO gddYBマウスの表現型(尿蛋白、血清IgA・AIM値、腎組織におけるIg沈着など)を追い、打ち込み実験の結果と検証する。臨床研究は現在腎生検症例および血清・尿サンプルを収集段階である。
nephritogenic IgA産生のgddyB由来hybridomaからIgAを精製する工程を年度内に行うことができなかったため予算を消費できなかった。
IgA精製カラムなど各種必要物品を用意の上、hybridoma培養上清からIgAを精製する。
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