研究課題
膜性腎症は基底膜上皮下の免疫複合体沈着を特徴とする腎症であり、成人のネフローゼ症候群(高度の蛋白尿により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称)の一定数(3~8割)を占めるとされる。ネフローゼ症候群や糸球体腎炎は、病型により治療方針が異なるが、膜性腎症を含め、その診断や鑑別には侵襲的な腎生検が必須である。しかし、安静が保てない全身不良患者や高齢者では腎生検は困難である。加えて、膜性腎症に対しては薬物治療として免疫抑制療法を行うことがあるが、治療効果に対する免疫学的指標として確立したものがない。臨床現場では、血液・尿検査による簡便なバイオマーカーが求められている。本研究計画では、膜型ホスホリパーゼA2受容体に対する血清抗体(抗PLA2R抗体)の測定法として、汎用性、簡便性、定量性に優れた、ELISAを開発すること、開発したELISAおよび従来法を用いて、日本人の成人の特発性膜性腎症における血清抗PLA2R抗体の特徴の解析をすることであることを目的としている。初年度(平成26年度)に当初計画していた具体的な研究項目は、①PLA2Rの安定形質発現株の作製、②同細胞を用いたウェスタンブロットによる抗PLA2R抗体の検出、③腎生検検体とウサギ抗PLA2R抗体を用いた免疫蛍光染色、④日本人特発性膜性腎症患者における抗PLA2R抗体の陽性率、抗体価の経時的推移の検討、⑤同細胞を用いたCell ELISAの新規構築と抗PLA2R抗体価の定量測定であったが、③以外については、達成し、その成果を、2014年の米国リウマチ学会総会で発表した。この発表においては、特筆すべきこととして、抗PLA2R抗体の測定結果が、同抗体の結果を知らずに臨床医が選択した治療方針と有意に関連していることが新たに見いだされた。また、研究開始後に市販ELISAキットが発売されたため、その有用性を併せて検証した。
2: おおむね順調に進展している
初年度(平成26年度)に当初計画していた具体的な研究項目は、①PLA2Rの安定形質発現株の作製、②同細胞を用いたウェスタンブロットによる抗PLA2R抗体の検出、③腎生検検体とウサギ抗PLA2R抗体を用いた免疫蛍光染色、④日本人特発性膜性腎症患者における抗PLA2R抗体の陽性率、抗体価の経時的推移の検討、⑤同細胞を用いたCell ELISAの新規構築と抗PLA2R抗体価の定量測定であったが、③以外については、達成し、その成果を、2014年の米国リウマチ学会総会で発表した。この発表においては、特筆すべきこととして、抗PLA2R抗体の測定結果が、同抗体の結果を知らずに臨床医が選択した治療方針と有意に関連していることが新たに見いだされた。また、次年度(平成27年度)以降の当初計画としては、昆虫細胞・バキュロウイルスまたは哺乳動物細胞を用いた遺伝子組換えPLA2R蛋白の作製とそれを抗原としたELISAの新規構築を予定していた。しかし、同様のELISAキットが市販されたため、独自開発は中断し、その市販キットの有用性を日本人患者検体で検討することとし、有用であることを確認した。現在、これらの結果について論文作成中である。
次年度(平成27年度)以降の当初計画としては、昆虫細胞・バキュロウイルスまたは哺乳動物細胞を用いた遺伝子組換えPLA2R蛋白の作製とそれを抗原としたELISAの新規構築を予定していた。しかし、同様のELISAキットが市販されたため、独自開発は中断し、その市販キットの有用性を日本人患者検体で検討することとし、有用であることを確認した。また、その他の当初計画としては、既報よりも多数例および非腎炎症例も含めての、SLE患者における、血清抗PLA2R抗体陽性率の検証することにしており、実施する予定である。また、研究計画を拡張し、ポドサイトのセルラインを用いて、抗PLA2R抗体の病原性についても検討する予定である。
当初計画としては、昆虫細胞・バキュロウイルスまたは哺乳動物細胞を用いた遺伝子組換えPLA2R蛋白の作製とそれを抗原としたELISAの新規構築を予定していた。しかし、同様のELISAキットが市販されたため、独自開発は中断することにし、同市販キットを購入してその有用性を検証したので、必要経費が大幅に減少した。また、国際学会発表に伴う旅費について、別予算から充当することができたので、その分、必要経費が減少した。
これらの差額を利用して、研究計画を拡張し、ポドサイトのセルラインを用いて、抗PLA2R抗体の病原性についても検討する予定である。
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