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2014 年度 実施状況報告書

血清尿酸値に影響を及ぼす遺伝子の解析に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26461244
研究機関東京薬科大学

研究代表者

市田 公美  東京薬科大学, 薬学部, 教授 (80183169)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード尿酸輸送体 / プリン代謝 / 高尿酸血症
研究実績の概要

本研究は、尿酸トランスポーター変異体の尿酸輸送能を検討し、痛風・高尿酸血症発症における各尿酸トランスポーター異常の関与の程度などの詳細を解明する。本年度は、①SLCファミリートランスポーターの尿酸輸送評価系の構築と②ABCG2の尿酸輸送評価系の構築を目的とした。
①SLCファミリートランスポーターの尿酸輸送評価系の構築
アフリカツメガエル卵母細胞にURAT1/SLC22A12のcRNAを注入し、2日間培養することによりURAT1発現細胞を得た。また、低尿酸血症患者に見られる遺伝子変異G366RをコードするURAT1変異体cRNAを同様に導入した細胞も構築した。それらの卵母細胞に14C標識尿酸を添加し、取り込まれた尿酸量をシンチレーションカウンターにより定量した。
結果、URAT1発現卵母細胞は、cRNAを導入していない卵母細胞よりも有意に高い尿酸取り込み量を示した。さらにG366R変異体を発現した卵母細胞において、野生型と比較し有意な尿酸取り込み量の減少を認めた。これはG366R変異によるURAT1機能低下が低尿酸血症を惹起した可能性を示す。これらから、本手法によりURAT1及びその変異体の尿酸輸送評価が可能であると結論した。ここで構築した系を用い、今後高尿酸血症患者から同定された変異体の尿酸輸送評価が可能であると考えられる。
②ABCG2の尿酸輸送評価系の構築
ヒト胎児腎由来HEK293細胞にABCG2をコードする遺伝子ベクターをトランスフェクションし、細胞膜画分を抽出した。さらに吸引吐出により膜反転した反転膜小胞に尿酸を添加し、取り込まれた尿酸量を高速液体クロマトグラフィーにより定量評価した。その結果、ABCG2発現反転膜小胞においては、ATP依存的な尿酸取り込み量増加が見られたが、ABCG2を介した尿酸輸送量をさらに増加させる必要があると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の計画のうち、SLCトランスポーターファミリーの尿酸輸送評価系構築については達成されたが、ABCG2の尿酸輸送評価系の十分な構築には至らなかった。理由として、ヒト胎児腎由来HEK293細胞への安定したABCG2遺伝子導入法確立、および反転膜小胞の調製に詳細な条件検討を行ったため、計画よりも多くの時間を要したことが挙げられる。当初は遺伝子導入法としてエレクトロポレーション法を使用したが、通電による物理的刺激で細胞の生存率が低下することが障害であった。対策として、カチオン脂質とDNAの複合体を導入するリポフェクション法を新たに検討し、トランスフェクション後の細胞生存率を向上させることができた。反転膜小胞の作製に関しては、細胞膜成分を抽出する際のショ糖密度勾配遠心条件を詳細に振って検討することにより、安定した収量を実現した。現在、ABCG2を介した尿酸取り込み量をどの様に増加させるかが問題であるが、次年度においても継続し、反応時の条件検討を行うことにより検出能の向上を図ることが可能であると考える。

今後の研究の推進方策

ABCG2の尿酸輸送評価系構築について、引き続き検討を行う。現在の問題点は、ABCG2を発現していない反転膜小胞によるバックグラウンドの尿酸取り込み量が高いことである。解決策として、①反応時間・温度・反応溶液組成の条件検討 ②取り込み反応終了時の洗浄回数・洗浄溶液組成の条件検討 が挙げられる。それらを試行しても改善が見られない場合、高速液体クロマトグラフィーによる検出ではなく、既存報告(Nature Communications, 3, 764-770, 2012)を参考に、14C標識尿酸を添加し、取り込まれた尿酸量をシンチレーションカウンターにより定量する手法に変更する。
同時進行として、高尿酸血症患者100例におけるSingle Nucleotide Polymorphism(SNP)の同定を行う。遺伝子GLUT9/SLC2A9、NPT1/SLC17A1、NPT4/SLC17A3、OAT2/SLC22A7、PDZK1、OAT3/SLC22A8 のそれぞれにつき、全コーディング領域のシークエンスを行う。これによりアミノ酸置換を引き起こす非同義置換SNPs(nsSNP)を同定すると同時に、頻度を明らかにする。さらに、NCBI のdbSNP データベース及びJSNP データベース上のSNPs と比較し、日本人における頻度が明らかなものは、高尿酸血症症例に高頻度に認めるものの有無を検討する。同定したnsSNPの変異体をコードする遺伝子ベクターを作製し、そこから合成したcRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に導入する。変異体を発現した卵母細胞に14C標識尿酸を添加し、取り込まれた尿酸量を定量することにより変異体の尿酸輸送能を検証する。

次年度使用額が生じた理由

次年度への繰越金は少額であり、実験施行のための物品購入には足りなかったため、次年度への繰越金とした。

次年度使用額の使用計画

次年度に計画している実験の一部として、使用する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] NPT1/SLC17A1 is a renal urate exporter in humans and its common gain-of-function variant decreases the risk of renal underexcretion gout.2015

    • 著者名/発表者名
      Chiba T, Matsuo H, Kawamura Y, et al
    • 雑誌名

      Arthritis Rheumatol

      巻: 67 ページ: 281-287

    • DOI

      10.1002/art.38884.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Common Dysfunctional Variants of ABCG2 Have Stronger Impact on Hyperuricemia Progression than Typical Environmental Risk Factors2014

    • 著者名/発表者名
      Nakayama A, Matsuo H, Nakaoka H, et al
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 4 ページ: 5227-5286

    • DOI

      10.1038/srep05227

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A common variant of organic anion transporter 4 (OAT4/SLC22A11) gene is associated with renal underexcretion type gout.2014

    • 著者名/発表者名
      Sakiyama M, Matsuo H, Shimizu S, et al
    • 雑誌名

      Drug Metab Pharmacokinet

      巻: 29 ページ: 208-210

    • DOI

      10.2133/dmpk.DMPK-13-NT-070

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Common variants of cGKII/PRKG2 are not associated with gout susceptibility.2014

    • 著者名/発表者名
      Sakiyama M, Matsuo H, Chiba T, et al
    • 雑誌名

      J Rheumatol

      巻: 41 ページ: 1395-1397

    • DOI

      10.3899/jrheum.131548

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 腹部超音波検査で診断された痛風腎症例の特徴とABCG2遺伝子変異2014

    • 著者名/発表者名
      西川 元, 市田 公美, 大野 岩男他
    • 雑誌名

      痛風と核酸代謝

      巻: 38 ページ: 117-128

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 痛風・尿酸代謝研究 最近の進歩:From Bench to Bedside 腎外排泄低下型高尿酸血症2015

    • 著者名/発表者名
      市田 公美
    • 学会等名
      第88回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2015-03-18 – 2015-03-20
  • [学会発表] ABCG2機能低下は尿酸の腎排泄及び腎外排泄の低下により高尿酸血症を引き起こす2015

    • 著者名/発表者名
      松尾 洋孝, 中山 昌喜, 崎山 真幸他
    • 学会等名
      第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-02-19 – 2015-02-20
  • [学会発表] 高尿酸血症の発症における生活習慣とABCG2遺伝子の影響力の比較2015

    • 著者名/発表者名
      中山 昌喜, 松尾 洋孝, 高田 雄三他
    • 学会等名
      第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-02-19 – 2015-02-20
  • [学会発表] 腎尿酸排泄輸送体遺伝子NPT1/SLC17A1の機能獲得型変異は痛風発症に保護的に働く2015

    • 著者名/発表者名
      千葉 俊周, 松尾 洋孝, 河村 優輔他
    • 学会等名
      第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-02-19 – 2015-02-20
  • [学会発表] 腹部超音波検査で診断された痛風腎症例の特徴とABCG2遺伝子変異2015

    • 著者名/発表者名
      西川 元, 市田 公美, 大野 岩男他
    • 学会等名
      第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-02-19 – 2015-02-20
  • [学会発表] 尿酸トランスポーターURAT1遺伝子重複変異モデルにおける尿酸輸送活性及びURAT1発現局在の検討2015

    • 著者名/発表者名
      中村 真希子, Blanka Stiburkova, 木村 徹他
    • 学会等名
      第48回日本痛風・核酸代謝学会総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-02-19 – 2015-02-20
  • [学会発表] Gout and hyperuricemia in terms of urate transporter disease2015

    • 著者名/発表者名
      Ichida K
    • 学会等名
      Hyperuricemia and Cardio-Kidney Disease Forum 2015 in Okinawa
    • 発表場所
      Okinawa
    • 年月日
      2015-02-07 – 2015-02-08
    • 招待講演
  • [学会発表] 尿酸排泄輸送体ABCG2遺伝子の機能低下型変異は腎排泄低下型と腎負荷型高尿酸血症の両方の原因となる2014

    • 著者名/発表者名
      松尾 洋孝, 中山 昌喜, 崎山 真幸他
    • 学会等名
      日本遺伝子診療学会第21回大会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2014-11-19 – 2014-11-22
  • [学会発表] 高尿酸血症の発症においてABCG2遺伝子変異による影響は生活習慣より強い2014

    • 著者名/発表者名
      中山 昌喜, 松尾 洋孝, 中岡 博史他
    • 学会等名
      日本遺伝子診療学会第21回大会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2014-11-19 – 2014-11-22
  • [学会発表] ワークショップ2 尿酸代謝のnew frontier 尿酸異常症の病態2014

    • 著者名/発表者名
      市田 公美
    • 学会等名
      第44回日本腎臓学会東部学術大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2014-10-24 – 2014-10-25

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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