研究実績の概要 |
GLUT9/SLC2A9とABCG2の2つの遺伝子が、血清尿酸値に強く影響する。ABCG2は機能が半減するQ141Kのアレル頻度が0.28と著しく高く、機能を喪失するQ126Xの頻度も0.03と高い。この2つのSNPsのハプロタイプの組み合わせから、ABCG2機能を推定できる。我々は、この推定機能が低いハプロタイプを持っていると、痛風・高尿酸血症のリスクが高くなることを示した。一方、GLUT9/SLC2A9は血清尿酸値に強い影響力を持つにも係わらず、どの様に高尿酸血症の発症に関与しているのかは不明のままである。腎臓の尿細管において、GLUT9/SLC2A9は再吸収方向に働くトランスポーターであるため、機能低下を示すSNPにより血清尿酸値が低下することが推定される。しかし、今までGLUT9/SLC2A9の変異体の機能変化を証明した報告はない。今回、多くの研究者が用いている通常のアフリカツメガエルの卵母細胞を用いた輸送実験システムでは、変異体の輸送能変化を検出できていない可能性があると考え、実験時の条件の検討を行った。集団によっては血清尿酸値との関連が報告されているV282I (V253I, rs16890979) とR294H (R265H, rs3733591)を対象とした。卵母細胞への通常のcRNA注入量である25-50 ngでは、両変異体とも野生型と同様に尿酸取り込みは1 pmol/injection程度であったが、5 ngの注入量にした場合、両変異体の尿酸取り込みは野生型に比し低下を認めた。これらのことから、生体内において、この機序によりこの2つの変異体が血清尿酸値に影響を与えている可能性が考えられた。しかし、実験毎のばらつきがあることから、更なる追加実験が必要であり、また、この機序の証明には、生体内でのGLUT9/SLC2A9の発現量と尿酸の量比の検討が必要である。
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