研究実績の概要 |
4週齢雄SDラットの片腎を摘出し8%食塩食を負荷することで慢性腎臓病モデルを作成した。このラットの腎交感神経を機械的に切断し、心機能の変化、腎障害の変化を比較検討した。昨年は心機能に関わる遺伝子としてSERCAについて検討を行ったが、本年はレニンアンジオテンシン系並びにその下流のNHE-1遺伝子などについて発現の変化を検討した。本モデルにおいて食塩負荷により血中レニン、アルドステロンは抑制されるが、レニンアンジオテンシン系関連遺伝子の変化は認めなかった。また、アルドステロンが抑制されることからその下流の遺伝子のひとつであるNHE-1は抑制されることが期待されたが、抑制されることはなく、不適切に発現が亢進していることが示された。 一方、上述の実験では腎交感神経切断を物理的に行っているが、この方法では腎臓の遠心路、求心路の双方が切断される。そこで、今回は求心路の影響をみるためにカプサイシンを用いて求心路を切断したところ、昨年の方法と同様、心機能の改善を認めた。またSERCA2aの発現も回復していた。このことは慢性腎臓病モデルの腎臓は何らかのシグナルを感知し、中枢へ情報を送り、中枢から心臓に対してシグナルが伝わることにより心機能の制御をしていることを示唆する。 昨年の結果と併せて考えると中枢から心臓へのシグナルはSERCA, NHE-1といった遺伝子を調節する共通の因子が考えられる。in silicoで検討したところこれらの遺伝子プロモーター領域に共通の転写調節部位があることから、これらを手掛かりに検討を進める。
|