研究課題
「骨細胞ネットワークを分子標的としたリン管理の新規戦略」研究を行うため、本年度は研究計画に準じて、骨細胞死滅マウス、Nampt遺伝子欠損(ヘテロ)マウスを作製しリンセンシング機構の解明に着手した。研究者が作製した、骨細胞を任意の時期にジフテリア毒素誘導的に死滅させることが可能であるトランスジェニックマウスを用いて、昨年度から引き続き本マウスを解析することで、体内へのリン保持機能が破綻することを明らかとした。通常食餌中のリンは必要な量は大部分を近位尿細管で再吸収するが、骨細胞死滅マウスでは骨細胞の減少数に応じて腎臓からのリン排泄量が著しく増加し骨への蓄積、軟組織での利用が出来ないことを明らかとした。さらに著しいリン排泄亢進が続くことにより慢性腎臓病に認められる、腎臓の線維化が進むことを見いだした。骨細胞数の現象は腎機能低下を誘発する可能性が示唆された。次に我々は、この体内保持機構の破綻は食餌中のリン濃度を明確にセンシングする機構が異常をきたすことが原因であると考えリン負荷、リン制限に対する応答性について検討した。野生型マウスではリン制限およびリン負荷食を摂取させると、腎臓で尿中リン排泄量を調節し血中リン濃度の恒常性を維持する。つまり、低リン食を給餌すると尿中リン排泄量は著しく減少し、逆に高リン食を給餌させると尿中リン排泄量を増加させ血中リン濃度を一定に保つのである。しかしながら、骨細胞死滅マウスではこのような現象が全く認められなかった。よって骨細胞は食餌中のリンをセンシングする細胞である可能性が示唆された。さらに、骨細胞のリンセンシングの情報が腎臓でのNampt 発現量に変換され尿中リン排泄量を調節する可能性も見出した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に無理がなく、研究室のスタッフおよび大学院生の十分なサポートも受けられたことが大きい。研究実施項目である1. 骨細胞ネットワーク破断モデルマウスの作成およびリン代謝解析、2. リンセンシング機構の骨細胞の関与を検討が順調に進んでいる。さらに次年度に向けてリンセンシングに関与する候補分子を見いだした。これらの状況は研究計画にそって、遅れずに進行しているため、「おおむね順調に発展している」と自己評価した。
おおむね順調に研究は推進できている。次年度も実験計画に基づき研究を進める予定である。現在使用しているモデル動物の繁殖も安定している。研究室のスタッフ、大学院生のサポートも十分に得ることができるため可能であり研究を進める環境は十分に整っている。また、次年度までの究成果までをまとめて学術会議での発表、論文作製に取りかかる予定である。これらの発表を重ねることで、他の研究者からの意見を取り入れ自身の研究を推進する方策とする。さらに『骨細胞ネットワークを分子標的としたリン管理』という新たな概念に基づく慢性腎臓病に対する治療戦略を見いだし、本領域に貢献することを目指す。
試薬の購入に際し、納品までの日数を要した為、年度内での使用が困難となった。
次年度への繰越額は消耗品費に加えて使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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