研究課題
近年CKDを伴う全身性ミネラル代謝異常(CKD- MBD) において、リン管理を目指した治療戦略は生命予後の改善に必須である。本研究の目的は『骨細胞ネットワークを分子標的としたリン管理』という新たな概念に基づく治療に貢献する分子基盤を見出すことである。我々は平成27年度までの研究より骨細胞欠損マウスにおいて、リンセンシング機構の破綻が、腎老化、異所性石灰化を誘発させる可能性示した。そこで、本年度は研究計画に従い、骨細胞が欠損しているマウスでは、食餌性の高リン負荷食、および低リン食に対して応答せず尿中リン排泄に変化がみとめられない原因を検討した。骨細胞欠損マウスでは、腎臓によるリン再吸収を担うナトリウム依存性リン酸トランスポーター (NaPi-IIa, NaPi-IIc)、腸管リン吸収を担うNaPi-IIb発現応答が野生型と異なり認められないことが分かった。このような、NaPi-IIa NaPi-IIb, NaPi-IIcの発現異常に加え.骨細胞欠損マウスでは、NAD代謝異常が認められた。NAD代謝はこれまでの我々の研究より、生体内リン代謝制御に関わることから、リンセンシング障害誘導因子となった可能性が高い。そこで、NAD合成酵素であるNampt欠損マウスにおいて食餌性リン応答を検討したところ、食餌性リン応答が野生型に比して低下していることを見出した。以上の研究成果より、骨細胞ネットワークの破綻は、NAD代謝異常を介して食餌性リン応答障害を示すことが明らかとなった。 腎機能の低下は骨代謝異常を示すことが広く認識されている。 しかしながら、今回の我々の研究成果は、老化による骨細胞数の減少が 腎臓、腸管のNAD代謝異常を引き起こし、リン代謝異常を誘導することで腎臓機能を低下させることを提示するものである。骨細胞ネットワークの正常化は慢性腎臓病予防につながると考えられる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件)
J Bone Miner Metab.
巻: Jan;34(1) ページ: 1-10
10.1007/s00774-015-0705-z.
Clin Exp Nephrol.
巻: Mar;21(Suppl 1) ページ: 21-26
10.1007/s10157-016-1359-4.