研究課題
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)における高リン血症は、血管石灰化に関与することから、CKD患者における生命予後を左右する重大な因子であり、生体内リン管理は特に重要視されている。さらに、近年新しい調節因子の登場により、リン代謝研究は進歩し、新たな概念が登場した。生体内リン代謝調節に大きな関わりをもつ臓器は入り口となる腸管(感知、調節)、最終調節をする腎臓、貯蔵する骨である。それに加えリン利尿因子PTHを分泌する副甲状腺やFGF23を分泌する骨は生体内リン濃度を感知する臓器とも考えられる。腸は体内にリンを取り入れる臓器であるが、真っ先にリンを認識する臓器であるとも考えられる。そこで我々は、腸は栄養素であるリンを取り入れる臓器であるだけでなく、食事性のリンを感知する臓器であると提唱する。最終的にはこの場でリンを感知し体内へシグナルを出す第一の感知器官であることを証明するために本研究を進めている。計画、方法の概要;食事タンパク質に含まれる有機リン、ポリリン酸から無機モノリン酸遊離過程における腸管アルカリフォスファターゼ(Akp3, Akp6)の関与と細胞間隙およびNaPi-2bが関わる腸管リン吸収とのクロストークをvivo, ex vivo実験を駆使し証明する。平成27年度の検討;Akp3ノックアウト(KO)マウスにおけるアデニン誘発腎不全モデルを作製したところ、野生型と比較して腎機能低下の進行が緩和した。これは、Akp3KOマウスの腸管NaPi-2b低下によるものが関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
AKP3KOマウスを用いた高リン血症を伴う腎不全モデルマウス解析がおおむね順調に進展している野生型マウスと比較してAKP3KOマウス腎不全モデルは腎機能低下の進行が有意に緩やかである。血中クレアチニンおよび血中リン濃度の上昇が野生型腎不全モデルと比較して、AKP3KOマウス腎不全モデルでは、有意に低い。これは、腸管リン吸収抑制が関与していると思われる。
今後は、AKP3の欠損によりなぜ腸管リン吸収が低下するかそのメカニズムを追求する。また、27年度に検討した高リン血症を伴う腎不全モデル以外に緩やかに腎機能が低下する他のモデルにおいてもAKP3の無いことで腎機能低下進行抑制効果を示すか検討したい。しかしながら、まず腸管培養細胞であるCaco-2、C2BB、T-84、Int407、HT29等を用いてin vitro研究を行う予定である。上記培養細胞において、AKP3とそのホモログの発現、腸管リントランスポーターの発現している細胞を選択し、AKP3発現抑制によるリントランスポーター抑制のシグナルを探索する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うちオープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
The journal of medical investigation
巻: 62 ページ: 209-218
10.2152/jmi.62.209
Journal of nutritional science and vitaminology
巻: 61 ページ: S173-175
10.3177/jnsv.61.S173
巻: 61 ページ: S119-121
10.3177/jnsv.61.S119
Clinical calcium
巻: 26 ページ: 187-191
CliCa1602187191