研究課題/領域番号 |
26461256
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
加藤 丈司 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (20274780)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 降圧ペプチド / 血圧変動 / アンジオテンシンII持続投与高血圧 |
研究実績の概要 |
血圧変動性の増大が、心血管疾患の独立した危険因子であると報告されているが、血圧変動性を縮小させる降圧治療について明確でなく、血圧変動性増大の病態や治療効果を解析するための疾患モデル動物についての研究報告も限定的である。代表者らは、平成26年度の本課題研究により、アンジオテンシンII(Ang II)持続投与高血圧ラットが、血圧変動性増大を合併した高血圧モデル動物であることを明らかにした。平成27年度の研究では、本モデルにおける血圧変動性増大の機序解明と治療方法の探索を試みた。8週齢のWistarラットを対象に、ヒトにおける24時間自由行動下血圧測定(ABPM)に準じて、無麻酔無拘束下に慢性実験テレメトリー自動計測システムを用いて、大動脈に留置したカテーテルより血圧と心拍数をモニターし、血圧の変動係数(CV)を算出した。14日間のAng II(240 pmol/kg/min)持続皮下投与群、Ang II+ロサルタン(30 mg/kg/日)経口投与群、Ang II+ヒドララジン(15 mg/kg/日)経口投与群、および対照群の4群を作成して比較した。Ang II持続投与群では、7日後および14日後の平均収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)が、対照群と比較して有意に上昇し、SBPおよびDBPの変動係数(CV)も2倍以上に増加した。Ang II+ロサルタン投与群では、7日後および14日後のSBPおよびDBPが有意に低下し、SBPおよびDBP のCVの増加も抑制された。一方、Ang II+ヒドララジン投与群では、Ang II投与群と比較して、7日後および14日後のSBPおよびDBPが有意に低下したが、SBPとDBPのCV の低下は観察されなかった。以上より、Ang IIによる血圧変動性の増大は、高血圧非依存性に生じていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の理由により、「当初の計画以上に進展している」と判断した。1)アンジオテンシンII持続投与ラットが、血圧変動性増大を合併した高血圧モデル動物であることを発見して、変動性増大の機序解明の研究を進展させた。2)上記発見について、特許を出願した。3)本研究成果の論文がAm J Hypertensに受理されて掲載された。4)本研究成果を国内の総会で口頭発表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究1)連続モニタリングされた血圧データより、数分毎(minute-to-minute)、数時間毎(hour-to- hour)、1日毎(day-to-day)の血圧変動性(BP variability)を算出する。収縮期および拡張期血圧の変動係数(CV)にて血圧変動性を評価し、昼間と夜間に分けてCVを評価する。本ステップで明確にする項目:①上記の複数の血圧変動性パラメータのなかで、高血圧の発症進展および高血圧性臓器合併症(心肥大、心筋線維化、蛋白尿)と密接に関連するパラメータ、②血圧変動性解析に適した高血圧モデル、③本研究に適した実験条件(週齢等)を明確する。
研究2)アンジオテンシンII持続投与ラットに、浸透圧ミニポンプを用いて、腹腔内または静脈内に、ANP、BNPを持続投与する。また、降圧ペプチド分解抑制効果を観察するために、NEP阻害薬を経口投与する。投与前、中、後の血圧変動性を比較し、非投与群とも比較する。心肥大、心筋線維化(組織学的定量)、蛋白尿を測定して、血圧CVの変化との関連を検討する。NEP阻害薬の効果を確認するために、投与終了時に血中降圧ペプチド濃度を測定する。
研究3)アンジオテンシンII持続投与ラットにおける血圧変動性増大の機序を解明する。血圧変動性増大が血圧非依存性であることを確認するために、アンジオテンシンII以外の昇圧物質(例、ノルアドレナリン、アルドステロン)の効果を観察する。大血管の硬度に関して形態学的な評価を試みて、圧受容器反射機能の変化を観察するために、一拍毎の血圧と心拍数の関連を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用ラットの購入が平成28年度になった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験用ラットの購入
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