研究課題/領域番号 |
26461257
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
石上 友章 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (50264651)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 食塩感受性 / 高血圧 / イオントランスポーター / レニン / アンジオテンシノーゲン |
研究実績の概要 |
これまでの研究によって、高血圧症・食塩感受性の病態をもたらす尿細管性機序には、AGT in PT (近位尿細管細胞でのアンジオテンシノーゲン)、Renin in CNT (結合尿細管細胞でのレニン)から構成される尿細管レニン・アンジオテンシン系(tubular RA系)による、アルドステロン感受性遠位ネフロンにおけるENaC-Nedd4L系によるナトリウム再吸収機構による恒常性の維持と破たんに由来する分子病態があることが明らかになった。本研究では、こうした分子レベルでの病態を、さらに追求するとともに、分子病態モデルをヒトに応用する。ヒトの高血圧症・食塩感受性を尿細管細胞に着目して制御することで、疾病・病態の克服を目指すTR(トランスレーショナル・リサーチ)を展開した。平成26年度は、不死化したヒトRPTECについての解析を進めた。immunoblotting解析にて、培養上清、細胞中のAGTの発現、分泌を確認した。また、培養上清中のAGTの定量のhigh throughput化に必要なsandwitch ELISAを応用した、新規のアッセイ系を確立することに成功した。現在、10cm dishから、small scale 96 wellの培養系の微量検体に対する、高感度のアッセイ系による分泌アンジオテンシノーゲンの測定プロトコールの固定化を目指している。尿細管RA系を構成する、重要な因子である結合尿細管レニンについて、昨年新規のalternative transcriptを発見し、報告した。(Ishigami T, et al. Hypertension, 2014) 昨年度は、尿細管特異的に発現するKspIプロモーターを使った、(P)RR TGマウスの作製に成功し、現在系統維持、繁殖、表現型解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近位尿細管上皮細胞(RPTEC)からの、アンジオテンシノーゲンの発現、分泌制御を解明する研究では、① 不死化RPTECの確立とCharacterの確認。② RPTECからのアンジオテンシノーゲン分泌、産生の確認。③ ELISA系のHTS化の3点について、ほぼ結果を得ることができた。今後は、具体的な分子や、化合物による制御を明らかにするとともに、in vivoでの系での検証にすすめていきたい。遺伝子改変動物の確立に成功し、表現型の解析に着手している。また、従来よりすすめていたNedd4LC2KOマウスの解析については、論文作成し、revisionのプロセスに入っており、引き続き論文受理を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
immortalized RPTECおよび、新規ELISAを使って、ヒト近位尿細管細胞におけるアンジオテンシノーゲンの発現、分泌制御を解明していく。遺伝子改変動物を使った、食塩感受性・高血圧症の分子メカニズムを解明していく。これらの研究成果を統合して、ベッドサイドでのトランスレーショナルリサーチの実現を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
サンドウィッチELISAの系については、キーとなる2つのモノクローナル抗体の決定をすませ、アッセイのより詳細なvalidationの段階に進んでいる。予定より順調に進んでいるが、ロットを変えたビオチン化抗体、アクセプタービーズへの抱合反応について、次年度にまたがることになり、一部持ち越しとなっている。
|
次年度使用額の使用計画 |
Immortalized RPTECおよび、新規ELISAを使って、ヒト近位尿細管細胞におけるアンジオテンシノーゲンの発現、分泌制御を解明していく。今年度は、よりELISAの精度を上げたプロトコールを確立し、近位尿細管細胞におけるAGTの発現、分泌の制御を、遺伝子から、低分子化合物にいたるまで、網羅的に解析をする。遺伝子改変動物を使った、食塩感受性・高血圧症の分子メカニズムを解明していく。これらの研究成果を統合して、ベッドサイドでのトランスレーショナルリサーチの実現を目指す。
|