研究実績の概要 |
H28年度の研究成果の一部は、アメリカ腎臓学会(Chicago, 2016.11.17-20)、生理研研究会(岡崎、11.24-25)で公表した。本年度は、Tyramide-ISH法、Western blottingで同定された集合管-B型間在細胞(IC-B)が、Ca感知受容体(CaSR)アゴニストとされる試薬(R568, Neomycinなど)により特異的に細胞内Ca応答が見られるかどうかを調べた。実験1: 低リン食誘導-高Ca血症マウスは、(1)Pendrin(IC-B管腔膜)の発現亢進とIC-B細胞の肥大化(管腔側への肥厚突出)を示し、(2)病態生理学的推論とは逆の「酸塩基バランス異常」(高Cl-性代謝性アシドーシスでアルカリ尿)を示す事を確認した。実験2: IC-B(側底膜)に発現すると予想されるCaSRの機能評価を検証するため、CaSRの局在と応答に異論のない「ヘンレループの太い上行脚(TAL)」をPositive controlとし、Fluo4-AM負荷した単離皮質集合管(CCD)(当該セグメント)・髄質外層集合管(OMCD)(対照セグメント)をLSM下で観察し、CaSRアゴニスト(R568, Neomycin, Ca)に応答する細胞内Caシグナルをリアルタイムで測定した。その結果、CCDで、TAL細胞と同期して細胞内Ca応答する少数の細胞を特定した。一方、OMCDにはTAL細胞と同期してCa応答する細胞は観察されなかった。これらの結果は、集合管のCaSRはIC-Bに特異的に発現し、酸負荷のない高Ca血症時には「非生理的に尿中へのアルカリ分泌を亢進させ、意図しないアシドーシスを招く可能性」を示唆した。
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