研究課題
昨年度から引き続き、間欠的低酸素暴露装置を用いて、ラットの血圧および心拍数をテレメトリーにて継続的に計測を行った。交感神経活動の指標である心拍変動については、間欠的低酸素暴露による食塩負荷と正常食においては変化を認めず、またレニンアルドステロン系の活性化を血中レニン・アルドステロンの濃度を測定したが、間欠的低酸素負荷では差が認められなかった。間欠的低酸素暴露による食塩感受性高血圧のメカニズムの解明として、昨年行った腎臓でのNa排泄の変化から、腎臓におけるNCC(Na+/Cl- 共輸送体)の発現の変化をみるために、腎臓組織から細胞膜分画を抽出し、NCCの発現をウェスタンブロットで確認した。2週間の間欠的低酸素負荷により、細胞膜分画でのNCCの発現は増加し、食塩負荷によって減少する発現変化も、間欠的低酸素負荷では持続的に発現が認められていることが確認できた。またほかの腎臓Na排泄に関与するENaC(epithelial sodium channel)は発現に変化がなく、間欠的低酸素による食塩感受性のメカニズムの一つとして、腎臓におけるNCCの発現の変化の関与があると考えられた。NCC発現変化・活性化を起こすメカニズムとして、WNK4などの調節因子・酸化ストレスによるOSR(oxidative stress-responsive 1 )などのリン酸化が考えられる。そこで、それぞれ間欠的低酸素モデルでの変化を検討した。WNK4の発現については変化が認められず、酸化ストレスを消去するTempol投与によってもNCC発現について変化を認めなかった。
2: おおむね順調に進展している
テレメトリーシステムについては、何度か故障があったものの、分子生物学的解析はおおむね順調に進んでいる。NCCの発現変化については膜分画キットをもちいて、定量的に測定することが出来た。NCCのリン酸化については定量的なデータが得られず、共同研究者からの提供をもとに、新しい抗体で検討する。テレメトリー送信機については業者に確認し、今後の使用方法を検討する。
食塩感受性となるメカニズムの解明について、今後はマウスの間欠的低酸素装置を新たに導入し、遺伝子改変マウス(NCC KO等)血圧変化等を検討する予定である。さらに、尿細管におけるNCC発現の変化を起こすメカニズム(転写因子・低酸素刺激など)についてIn vitro (細胞実験など)でも検討する予定である。
当初は本年度に国際学会への発表・参加を予定していたが、次年度に変更したため旅費の使用が繰越となった。
次年度はいままで得られたデータを元に、論文投稿・および国際学会などで成果を発表する。またマウスの間欠的低酸素装置に関しても、あらたな設備投資を行う。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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10.1165/rcmb.2014-0163OC.