研究課題/領域番号 |
26461269
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河合 香里 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80398007)
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研究分担者 |
祖父江 元 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20148315)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 孤発性ALS / 神経変性疾患 / dynactin-1 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は未だ有効な治療法がない神経変性疾患の一つである。現在ALSモデルとして汎用されているSOD1変異マウスは家族性ALSのモデルであり、この変異マウスによる研究結果は良好な臨床試験結果に結びついていない。ALSの約90%が孤発性であり、孤発性ALSの病態の本質を明らかにすることが根本的治療法を開発する上で重要だとわれわれは考えている。本研究は孤発性ALS患者の運動ニューロンで遺伝子発現低下が認められたdynactin-1に着目し、孤発性ALSの病態解明および新規治療法を開発することを目的としている。 運動ニューロン特異的dynactin-1ノックアウト(CKO)マウスは、運動機能障害、脊髄前角運動ニューロンの脱落、リン酸化ニューロフィラメントの蓄積、ユビキチン化封入体の形成など、ALSに特徴的な表現型、病理像を示す。本研究ではユビキチン化封入体構成タンパク質の同定、およびグリア細胞による病態増悪機序の解明に焦点を置いている。 LC-MS/MSで解析するにあたり、封入体形成を示すマウスの週齢を検討した。抗ユビキチン化抗体を用いて脊髄前角の免疫染色を行い、ユビキチン陽性の細胞内封入体が形成される適切な時期を見いだした。現在、脊髄のサンプリングを進めているところである。 様々な病期のdynactin-1 CKOマウスを用いて、GFAP(アストロサイト)、Iba-1(totalミクログリア)、CD86(M1ミクログリア)、Arginase-1(M2ミクログリア)について免疫染色を行い、病期と各種グリアの活性化との関係について検討した。その結果、CKOマウスでは病初期である15週齢よりグリアの活性化が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析は微量タンパク質の分析が可能であるが、本研究ではマウス脊髄前角のみをターゲットにしていること、抗ユビキチン抗体カラムを使用した回収を行うため、ある程度のロスが生じることを合わせると、まとまったサンプル数が必要になる。現在、質量分析用サンプルの回収、調整を行っている。必要量が回収でき次第、質量分析に供する予定である。 様々な病期と各種グリア細胞の活性化時期について脊髄前角におけるアストログリア、ミクログリアの活性化について免疫染色にて検討し、活性化が見られる時期を明らかにした。dynactin-1 CKOマウスにおける病態について、研究内容の発表を予定しており、概ね予定通り進行していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続きプロテオーム解析を進め、dynactin-1 CKOマウスにおける脊髄前角でのユビキチン化封入体構成タンパク質を明らかにする。得られたタンパク質情報を基に、培養細胞を用いて構成タンパク質の異常蓄積が病態に及ぼす影響について検証を行う。 グリア細胞の病態関与については、各病期でのサイトカイン発現をマイクロアレイにて解析する予定である。発現変動したサイトカインについて、培養細胞を用いた検証、ならびにALS患者髄液サンプルのELISAを行い、サイトカイン変動と病態との関連について、臨床的重症度などの指標を用いて相関解析を行い、バイオマーカー探索へと結びつける。
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次年度使用額が生じた理由 |
1月以降に使用した動物実験施設使用料の支払いが平成27年度になる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度より翌年度にかけて予定している実験動物関連への支払いに充当する。
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