研究課題
孤発性ALS患者の運動ニューロンで特異的に遺伝子発現低下が認められたdynactin-1に着目し、運動ニューロン特異的dynactin-1ノックアウト(CKO)マウスを作成した。dynactin-1 CKOマウスは、運動機能障害、脊髄前角運動ニューロンの脱落、リン酸化ニューロフィラメントの蓄積、ユビキチン化封入体の形成など、ALSに特徴的な表現型、病理像を示す。本研究ではユビキチン化封入体構成タンパク質の同定、およびグリア細胞による病態増悪機序の解明に焦点を置いた。抗ユビキチン化抗体を用いてマウス脊髄の免疫染色を行い、dynactin-1 CKOマウスにおいては病初期より脊髄前角にユビキチン陽性の細胞内封入体が形成されることを確認した。質量分析に供するサンプルを回収するため、脊髄前角の凍結サンプルより抽出したタンパク質を抗ユビキチン化抗体カラムにより精製を続けてきた。残念ながらターゲットとしている脊髄前角が非常に小さく、質量分析を行うための必要量が不十分であるため、今後もサンプリングを行う必要がある。様々な病期のdynactin-1 CKOマウスを用いて、GFAP(アストロサイト)、Iba-1(totalミクログリア)、CD86(M1ミクログリア)、Arginase-1(M2ミクログリア)について免疫染色を行った結果、CKOマウスでは病初期である15週齢よりグリアの活性化が認められた。ウェスタンブロットにてGFAP、Iba-1が病初期に有意に上昇していることが確認できた。脊髄におけるサイトカインの発現変動を捉えるべくサイトカインアレイを用いて検討したが、有意に変動しているサイトカインを見出すことができず、今後脊髄前角に限局してサイトカイン変動について検討する必要があると考えられた。
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