研究課題
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease: AD)に特徴的な老人斑アミロイドはAβ蛋白からなり,Aβの蓄積がADの発症や進展に関与していると考えられている.AD脳でAβが蓄積する機序についてはいまだ不明な点が多いが,Aβの除去能力の低下がAβの脳内レベルを上昇させ,AD発症の一因となっている可能性が注目されている.従来,血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)を構成する微小血管内皮細胞に発現するLDL receptor-related protein-1(LRP1)が脳内のAβの循環血液中への排出に関与していると報告されてきた.しかし最近BBBを構成するペリサイトに発現するLRP1がAβ蛋白のBBBを介した排出に関与している可能性を示す報告がなされた.すなわち,脳微小血管内皮細胞およびペリサイトの双方でAβ蛋白のBBBを介した輸送が能動的に行われている可能性がある.また,BBBにはこの2つの細胞に加えアストロサイトが存在するため,ヒトのBBBにおけるAβ蛋白輸送を明らかにするにはこれらの3つの細胞からなる新たな3次元in vitroモデルが必要であると考え,その構築を行った.我々が過去に樹立したヒト脳微小血管内皮細胞株(TY10株),ペリサイト株(HBPCT株)およびアストロサイト株(hAST株)を用い,triple co-culture in vitro BBB modelの作成に成功した.
2: おおむね順調に進展している
ヒトBBBにおけるAβ蛋白輸送のメカニズムを解明するに適したヒトin vitro triple co-culture modelを作成することができた.
今後はヒト微小血管内皮細胞,ペリサイト,およびヒトin vitro triple co-culture modelを用い,Aβ輸送を制御する物質の同定を行う予定である.
平成27年度は当研究室で所有する細胞株を用いた実験・研究が主体であったため物品費が当初の予定に満たなかったことと,次年度の試薬購入費として使用する目的のため未使用の研究費を繰越金とした.
培養皿と試薬の購入等に使用する予定である.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
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